2013年11月25日
いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ
リーマン・ショック後のケインズブーム(?)の中で流行した本です。
なぜ、「ケインズとシュンペーター」?という謎がありますが、意外と明らかになりません。著者の主張によると、二人の交点としては需要サイドに着目するという点で、その分析の結果、財政政策を謳うケインズと、企業サイドのイノベーションに説明を求めるシュンペーターという枠があるといったところでしょうか?
本としては、二人の経歴をざっくり辿る本としては読めます。一方、理論面はほとんどがケインズの説明といった感じで、スパイスとしてシュンペーターによるケインズ批判を取り上げているといった感じで、意外とシュンペーターについては述べられていません。”シュンペーター”という言葉で連想される”イノベーション”についても「大事だよ」といったレベルであって、「それで??」ということがほとんど述べられていないのが残念です。
最近はケインズ流の財政政策についても、その乗数効果の価値がどれほどだろう?とか、そもそもグローバル企業により投資の効果が海外に吸い上げられること、単純労働の減少といった問題により乗数効果が減ること、利益を雇用でなく企業の内部留保に吸い上げられること、単純労働のようなものにインセンティブを与えることで競争力が低い分野への傾斜配分になり国際競争力を落とすこと、といった問題があると思います(←経済学知らない素人考えを羅列してみました。間違ってるものもありそうです)
では、財政でなく金融政策かというと、そうでもないだろうということも理解できます。
いまこそ、ケインズとシュンペーターに学ぶのは分かるのですが、何をどのくらい学ぶのかはよく分からない本です。また、「それで??」の答えは自分でみつけるしかない...となると、そもそも学ぶことがあるのかないのか...よくわからない本でした。いや、二人の時代背景とかは多少分かったのですが....
「歴史の本は具体的な学ぶものがなくとも、そこから何かを感じるものだ」と言われるならその通りで、学ぶことは読者の手に委ねられているのかもしれません。
あ、タイトルはキャッチーです!リーマン・ショック直後にたくさん売れたのも分かります:->
2010年03月16日
アニマルスピリット
ジョージ・アカロフ、ロバート・シラー著
東洋経済新報社 2200円(税別)
初版: 2009年6月(原著も2009年)
ノーベル経済学賞受賞者で”ポンコツ中古車”市場で知られるジョージ・アカロフと、『投機バブル 根拠なき熱狂』で知られるロバート・シラーという黄金タッグの経済学書です。しかも訳者は山形浩生ということで、思わず買ってしまいました。
というと、ちょっと固くて読みにくそうですが、実際はコラム的な本で読みやすいです。逆にまとまりがないという印象です。
この本で述べられているアニマルスピリットというのは、ケインズが述べているもので人間の理性ではない部分です。経済学の中には、人間の合理性を前提にしているものが多いのですが、実際の人間には限定合理性とよく言われるような理性の限界があります。このような限定合理性(最小合理性)や行動経済学といったものが示唆するものが、アニマルスピリットです。
この本では、”貨幣錯覚はあるか?”(人はインフレ率を織り込むか?)、”なぜ不況に陥るか?”、”中央銀行には何ができるか?”、”なぜ失業がでるのか?”ということを説明しています。
アカロフというネーム買い&訳者買いだったのですが、思っていたようなアニマルスピリットの本というよりも、”アニマルスピリット”というテーマを持った経済コラムといった感じでした。ちょっとイマイチ。
2009年10月04日
アルファを求める男たち
ピーター・バーンスタイン著
東洋経済新聞社 2800円(税別)
初版: 2009年9月
サブタイトルは”金融理論を投資戦略に進化させた17人の物語”で、「市場は効率的なのか、もしくはそうでないのか」というテーマで、個人(や組織)を元に投資のアイデアの進化を説明した本です。
ちなみにタイトルに出ているアルファというのは、インデックス(たとえば日経平均やS&P500指数)に比べて得られる追加利得です。
アルファがないならアクティブ投資をする意味がない。一方、安いときに買って高いときに売る、もしくは安い銘柄と高い銘柄がありそれを見抜けるという直感もあります。
(直感があることは、論拠でも何でもないけど)
ここで登場している人たちはそれぞれの方法でアルファを求めているのですが、実際にはそれぞれが自分たちで市場をさらに効率化して、アルファが消えていくというのが市場の怖いところでもあります。
読んだ感想としては、やはりポートフォリオの問題であるということを強く思いました。最近、よく言われることですが、リスクと流動性も考慮すると不動産への投資は恐ろしい(多くの人にとっては一つのバスケットなので)ということを改めて思いました。
2009年08月27日
リスク 神々への反逆 (上、下)
ピーター・バーンスタイン著
日本経済新聞出版社 上下とも714円(税別)
初版: 2001年8月
この視点からすると、この本は金融リスクに関する教科書的歴史といった本でしょうか。
上巻ではサイコロ振りから始まって、フィボナッチ数列、パスカル、ラプラス、ゴールトン等々といった人たちの話を交えつつ、確率・統計が歴史上どのように発達してきたかを解説しています。
読んだ感想としては下巻はどこかで読んだことある話ばかりですが、著者が投資家ということもあるのか投資に関しての歴史がよくまとまっていると思いました。
一方、上巻については確率・統計の歴史がツッコミが甘いので若干残念でした。
いや実際には、この本は好事家のための本でなく受験生のための本だからなのでしょうか?
個人的にはこの本でもしばしば言及されているイアン・ハッキングの”偶然を飼いならす”の方が面白いと思いました。少し残念...いや、対象読者とは違ったのかもしれません...
2008年08月14日
敗者のゲーム 新版
チャールズ・エリス著
日本経済出版社
初版: 2003年12月(原書は2002年の第4版、)
いろんな本でよく参照される(そして絶賛される)「敗者のゲーム」です。初版は1970年代に出版されたものです。本書では1960年代まで株式投資が「勝者のゲーム」という得点を競い合うゲーム(例えばプロのサッカーのようなゲーム)だったのが、「敗者のゲーム」という失点を防ぐゲーム(例えばプロのバスケットボールのようなゲーム)になってしまった、ということを述べています。
本書の主張のポイントとしては、プロが増えすぎたことで、得点の余地がなくなってしまい、結局手数料を考慮するとアクティブ運用よりもインデックス投資がベター、といったところでしょうか。何故インデックス投資かというと、個人が個別銘柄に手を出すと、銘柄間のリスクが多いということと、リスクにはリスクプレミアムが乗っているリスクと乗っていないリスクがあるということでしょう。
基本的にはインデックス投資のバイ&ホールド派ということで、かなり本流なことを勧めているのですが、そこがまさに古典ということでしょうか。
他人の感想を読んで:
http://www.fund-no-umi.com/blog/2005/01/post_1.html
果たして、投資家としての僕の目的ははっきりしているのか? 証券市場や投資そのものについて十分理解しているのか?
この本は個人投資家向けの本ということで、各自の投資戦略目標(受け入れ可能リスクと目標金額)を明確にしましょうといったことも勧めています。たしかに何かを行うならば、これらが明確になっていないと判断ができないので、これは自明かな、と思いましたが、著者はこれを特に強調をしていた印象はたしかにありました。
何故だろうと思っていたのですが...
全般に、書かれてあることはどれも重要なことで、投資をする上で知っておくべきことばかりです。投資の初心者や、自信過剰な人は読んでおくといいでしょうね。謙虚になれます。逆に、本書に書いてあるような基本を知らずに株をやるのは危険でしょう。
私も全く同意です。いろんな本でこれが何故参照されたのだろう、とは思ったのですが、やはり古典だからでしょうか(つまり教科書を作ったということ)。また、第4版ということで、アメリカのものですがデータも豊富で読んでいて分かりやすく書かれている(=納得性が高い)というところポイントでしょうか。
