2012年04月25日
成功者は皆、ストーリーを語った。
元大物映画プロデューサーで、元ソニー・ピクチャーズ他のCEO。現在はUCLA教授そして、MLBのマイナー球団を多数経営し、NBAのウォリアーズのオーナーという著者によるストーリーテリングについての話です。アメリカの教授はすごい人多いですね。
本の内容は、全編ストーリーテリングでこう上手く行ったという事例です。ストーリーテリングのコツは多少述べていますが、どちらかといえば、ストーリーこそがポイントであるということのみを語った本と言えます。とても面白い本ですが、理論的なところはあまりありません。また、同じことが繰り返されている本なので、その点好き嫌いがありそうです。
ちなみに私は結構面白かったです。図書館で借りたのですが買おうかどうか悩み中です(ちなみに著者の書いたほぼ同内容の記事を以前HBRで読んだので、買うまででもないか、とも思って悩み中なのです)
2010年02月23日
100のキーワードで学ぶ コーチング講座
原口佳典著
創元社 1800円(税別)
初版: 2010年1月
この本ではコーチングを体系的に説明している本ではなく、各々のキーワードを通して”コーチングマインド”を感じさせるものです。”コーチングマインド”というのは、コーチが持つべき考え方とでもいうものです。
キーワードで語るというスタイルは好き好きがあるでしょうが、そもそもコーチングって何、コーチングの技法を体系的に学びたい、という方には向いていないかもしれません。(そもそも、コーチングに体系的な技法があるのか知りませんが...) ちなみに私はキーワードで語るスタイルの本は好きです :-)
それぞれのキーワードについては、有名な心理学者や社会学者などの言葉や概念なども載せられておりコンパクトにまとまっている印象ですが、ところどころにどこかのコーチの成功例がキーワードに絡めて書いてあり、残念ながらこれが鼻につく記載でした。
面白かったキーワードと、著者がキーワードごとにつけている”ひと言サマリー”をいくつか上げると
・沈黙を守る
沈黙は考える時間。それはクライアントに気づきを運ぶ、コーチングの祝福を受けた幸せな時間です。
・体験談を話す/シェアする
クライアントの語りを引き出すために、コーチは自分の物語を語ります。
・数値にする
数値にすることは、クライアントの判断を冷静にし、現状や行動を具体的にする第一歩でもあります。
・タイムマネジメント/時間
コーチはクライアントが主体的に時間を使えるように、クライアントのタイムマネジメントを意識化します。
また、この本は最後の参考文献には広範なジャンルにおいて興味深い本が並んでおり、著者の広さを感じました。
全体としては軽い本で、パパっと読める、コーチングマインド醸成本といったところなのでしょうか。
2009年10月17日
わかりやすく<伝える>技術
池上 彰著
講談社現代新書 740円(税別)
初版: 2009年7月
「週間こどもニュース」で有名な池上さんの本です。池上さんはフリーになってから、多量に本を書いてるようですが、せっかくなので一冊読んでみました。
内容としては、分かりやすく説明することと、コメント力についてでしょうか。
分かりやすく説明するというのはその通りで、相手への気遣いと論理構造の明確化がポイントとなります。
コメント力については、”空気を読むこと””期待を裏切ること”としています。これは”自分に求められていることを行う”ことと”当たり前のことを言わないこと”です。
考える技術・書く技術
バーバラ・ミント著
ダイアモンド社 2800円(税別)
初版: 1999年3月
文章の論理構造を考えるための本です。元々は古い本でアメリカでは1973年に出たものです。日本語版は前版は1995年が初版で、この改訂版は1999年に出たものです。
この本はタイトルが考える技術・書く技術となっていますが、主題としては文の論理構造化についてです。論理構造を上から下へ詳細化するようにピラミッド型にするというのが基本的な主張となります。
読んだときの感想としては、学生時代に論文を書いていた人やロジカルシンキングについて知っている人は既読感が強いものではないかと思います。
もし読んだことがない方はまずは手に取るだけでも一読してください。
私は衝撃を受けました。
2009年10月09日
反論の技術
香西秀信著
明示図書 1760円(税別)
初版: 1995年8月
レトリック関連の本を多数書いている香西氏が反論について書いた本です。
ちなみに反論というのは、数学のように明確な論証ができないテーゼ対しては必ず必要なものとなります。これは、明確な論証がない故に、反論というものがないとテーゼが正しいかどうかの判断ができないということになります。
ちなみに反論のいくつかのポイントとしては、たとえばもともとが、「A子は美人だが性格が悪い」ということを論拠にしていた場合に、「A子は性格が悪いが美人だ」と順序を変えることや、「そもそも、すべての場合においてそれが成り立つとは限らない」といった無理な一般化に対する反論、「ジャングル大帝では類型的な黒人が差別的に描かれているといって手塚治虫を非難するならば、ベニスの商人で狡猾なユダヤ商人を描いたシェイクスピアこそを非難すべき」のような状況限定した理論に対する反論といったものがあります。
また、この本では、反論のパターンを明確にしています。
1.最初に「反対である」旨を明示する。
2.相手の結論を上げる
3.相手が上げている理由を挙げる
4.「第一に...、第ニに...、第三に...、」として相手の理由を崩す
5.上記により、相手の結論は成り立たないということを明示する
といったことです。
実際にこのような反論をするためには、香西氏がよく述べているような”トピカ”というような反論の型を持っておくことが重要となります。
香西氏が書かれているように、議論においては反論が大事で、それが行われないと議論が成り立たず、結果として理解が深まりません。また、議論で勝つためには、相対する主張を行うよりも反論をする方が容易ですし、この本は議論術の入門書としては分かりやすい一冊だと思います。
2009年09月04日
記憶・思考・脳
横山詔一・渡邊正孝著
新曜社 1900円(税別)
初版: 2007年5月
人間の思考というものを考える上では、言語や感情ということも大事ですが、記憶についても考えておく必要があります。
最小合理性を読んでいると、人間の長期記憶・短期記憶やワーキングメモリに興味が出てきたので、読んでみました。
この本は、タイトルの通り”記憶”、”思考”、”脳”を中心としてキーワードを概説したもので、非常に読みやすい本です。
1つづつのキーワードが非常に短くまとまっているために、読み始めるとあっという間に読めてしまいますが。実際には1つのキーワードの説明にも、複数の有名な心理学実験のことが記述されていたりと、密度が濃いものになっています。
面白かったのは、fMRIやPETの違いでしょうか。最近、”脳科学”が流行っているので、よくでてくるのですが、差異を知りませんでした。
2009年08月24日
リファクタリング・ウェットウェア
アンディ・ハント著
オライリージャパン 2800円(税別)
初版: 2009年4月
サブタイトルは”達人プログラマーの思考法と学習法”とありますが、実際にはエンジニア向けに編集したポップ心理学のまとめ本といったところでしょうか。
RモードとLモード(日本ではいわゆる右脳と左脳)の差異や、集中の仕方、マインドマップなど、疑わしいモノからそうでないものまで様々な心理学的なネタがかなり網羅されています。基本的には、日本でも紹介されているものですが、”ドレイファスモデル”というのは新しい考え方でした。
つまり初心者は内的な直感よりもルールを重視して、状況よりも手続きを重視するが達人になるにつれこの傾向はなくなっていくというものです。
ここ以外はすべてどこかで聞いたことがあるネタばかりでしたので、あまり面白くありませんでした。
2009年07月05日
ファシリテーション・グラフィック
堀公俊、加藤彰著
日本経済新聞社 2000円(税別)
初版: 2006年9月
ホワイトボードや模造紙などを使った(主にホワイトボード)会議でのファシリテーションの本です。
といっても中心はファシリテーションというよりも、ホワイトボードの使い方でしょうか。
実際には会議の参加メンバーはホワイトボードに集中するので、ホワイトボードの使い方≒ファシリテーションスキルという感じでしょうか。
ちなみにホワイトボードは、忘れない、集中させるということ以外にも、発言者と発言内容を切り離すという目的もあります。
たまに発言者と発言内容ごっちゃにする人がいるので、たしかにこういう意識を持っているといいかもしれません。
読んでいて面白かった点としては
1.同じことを何度も主張する人には→主張したことをちゃんとホワイトボードに書く。サービスで花マルとかもつけちゃって、聞いているというメッセージを発信
2.仕切り屋にはペンを持たせるな。
3.目立たせる文字は斜め書きを使う
4.書く際には全体の完成図もイメージしながら配置する
様々な書き方のポイントなどが書いてありますが、要は躍動感と強調を使って、キラキラワクワクな会議をどう引き出すかといったところでしょうか。
2009年04月09日
心の動きが手にとるようにわかるNLP理論
千葉英介著
明日香出版社 1800円(税別)
初版: 2003年10月
いつの間にか人の心に入り込み、
納得させ、説得し、
協力者をつくる。
NLPの基本がよくわかる!
という本だそうです。
NLP(神経言語プログラミング)という名前は非常によく聞くのですが、どういうものか分からなかったので読んでみました。
結論から言うと、NLPというのはポップ心理学【ライトで大衆向けの心理学(っぽいもの)】でしょうか。
ニューロとか、脳科学とか、言語学からのフィードバックといったものを期待して読んでいたのですが、期待が大きすぎました。
いわばNLPの名前勝ちでしょうか。
コミュニケーション方法として、”ラポール”(場を和ませる)、”ペーシング”(相手のペースで話す)や”ミラーリング”(相手と同じようなしぐさをする)、
また、モチベーションや問題解決手法として、”リフレーム”(そもそも部分を変える)や”チャンキング”(目標を細かくする)
といった普通によく言われているものいろいろ集めたといった感じでしょうか。
この本ではこのような小ネタだけでなく、”メタモデル”という概念についても若干触れられていますが、これも風呂敷を広げている割には消化不足な感が私にはしました。
他の方の書評を読んで:
本の説明がうまくまとまっていると思います。
ただ、私がごきぶりポーカーをやってる時に相手の目を見ててもぜんぜん分かりませんでした。
NLPの達人とごきぶりポーカーをやってみたいものです:-)
http://blog.yhasegawa.biz/archives/2007/01/03091328.php
うまく伝えるために、相手を知り、それにあわせることで、
コミュニケーションを向上させていく。
まさにこのとおりだと思いました。”心の動きが手にとるようにわかる”や”神経言語プログラミング”という大層な宣伝文句がありますが、
”分かりやすく話す本”くらいがいいタイトルですよね...
つまり、”NLP”は”心理学”でなく、”コミュニケーション技法”というくらいに捉えておくとちょうどいいかもしれないと思いました。
ここを私は読み違えていました。
2008年09月15日
心の対話者
鈴木秀子著
文春新書
初版: 2005年9月
基本的にはコーチングといったジャンルでしょうか。どこかで読んだようなことばかり載っていたという印象です。
要は聞くときに自分の心(内なる声)を沈黙することを述べている本といえます。「いや、こうでしょ」とか「たしかに〜〜ですよねーっ」ではなく、「どうしてそうなの?」でもない。
相手の言いたいことを一歩先を導くように聞いていく(ただし方向性はコントロールしない)といったことでしょうか。
「え?でも、導かないで、自分の意見も封じて聞いていくってなにそれ?」というそもそも論もあるかもしれません。つまり、何のために聴くのか、という問題です。
これは相手のためでなく、自分のため?仕事の上では、相手のためと自分のためは一致しているのですが、普段は相手のためというのは自分のためと思ってしまうのです...うーん。
ところで、読んだところで、改めて自分が気にしないといけないのは、言葉、感情、あいづちによるミラーリング(特に感情はできてない)と、90:10の法則です。
ミラーリングは名前の通り、返すことです(反すとは違うか...)。
90:10の法則という不快感の90%は以前の蓄積によりなっていて、10%がその言葉によるといった法則です。
どこかで読んだことばかりといっても、うまくまとまっているので、コーチングや”聴く力”的なものに興味がある人にはうまくまとまっているんではないか、と思いました。逆にいえばもう一歩踏み込んで欲しかったのですが、新書の位置付け的には正しいポジションでしょうか。
