2007年12月22日

戦争論

クラウゼヴィッツ著
徳間書店 2000円(税別)
初版: 1965年1月

内容:
あまりに有名な本ですが、元々はプロシアの軍人カルル・フォン・クラゼヴィッツが書いたもので、クラウゼヴィッツの死後に、クラウゼヴィッツ婦人が1832年〜1834年に出版したものです。

第一篇 戦争の性質について
第二篇 戦争の理論について
第三篇 戦略論
第四篇 戦闘
第五篇 防御
第六篇 攻撃(草案)
第七篇 作戦計画(草案)
の計7篇からなっています。6,7篇については草案となっており未完となっていますが、分量的には他篇とあまり遜色がありません。また、この徳間書店版では、本来の第5篇の戦闘力について述べた篇が、現在との技術の差異により意義が薄いとして削除されています。


感想:
クラウゼヴィッツは、名前は知っていたのですが、昔読んだ本を勘違いしていて、「クラウゼヴィッツは戦争経験がほとんどない理論家」と思い込んでいてスルーしてました...

実際にはこれは(フレデリック)ランチェスターですね。ランチェスターは「戦闘力は、戦力の2乗に比例する」といういわゆる戦闘力集中の法則です。もっとも、今はビジネス書のところに、「ランチェスターの法則」というキーワードが入った本が大量に出ていますが....
クラウゼヴィッツは本物の軍人であり、また読んだ感想としては「君主論」と「ナポレオン」の影響を色濃く受けています。というか、この2つのキーワードの基に戦争論が書かれたといっても過言ではないのでしょう....たぶん。
いくつかの引用としては、
つまり、戦争とは、敵を強制してわれわれの意思を遂行させるために用いられる暴力行為である。
かくて暴力、つまり物理的暴力は手段であって、敵にわれわれの意思をおしつけるのが目的である。
戦争は、他の手段を用いる、政治的やりとりの継続にすぎない。
この3文が”戦争論”の一番コアな主張に関わるところだと思いますが、”戦争論”では戦争は政治の一手段にすぎないと主張しています。そしてこれを断言しているところが、大きな特徴です。
ちなみに、戦争は政治の一手段にすぎない、という主張がとても新鮮でした。戦後世代のせいなのか、「戦争=悪」というイメージがあったのですが、「政治の延長として存在している暴力」というのがより正しいイメージということでしょうか。政治が主で、戦争が手段という関係を間違えてはいけないということでしょうか。


また、ナポレオンの勝利と敗北を同時代人として生きた人の著書ということか、防御についての内容も印象的ですが、基本的には防御の有利さについて述べられています。要塞化されていない場合、防御側は兵力として1.5倍の効果があるとか2倍とかいわれますが、戦略レベルの視点でみて、さらに戦争が終わるまでという見方でみると防御側のメリットがとても大きいことが分かります。

他の点としては、戦闘は徹底的に行わないといけないことと、決戦主義指向ということがあります。決戦主義指向というのは、戦略目標にリンクした戦闘をしないといけないこととなります。これを行わずに、お茶を濁すような選択を取って互いにダラダラ戦争を続けるという選択になりやすいが、それを行うと攻撃側は負ける確率が非常に増すということになります。
戦争論の”読み”としては、戦争についての本としてのみ読んでいました。もしくは政治との相対としての戦争という見方でのみ読みました。ありがちなビジネス論としての読みということはしませんでした。やっぱりなんでもビジネス論や人生論として読むのは違うだろ、と思います。


他人の書評を読んで:
”戦争論 書評”で軽くググってみたのですが....小林よしのりの本ばっかり...

”戦争論 書評 クラウゼヴィッツ”でググってみたのですが......二次著作の書評ばっかりでした.. orz
 
posted by 山崎 真司 at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦略論