2009年07月31日

イノベーションの新時代

C.K.プラハラード、M.S.クリシュナン著
日本経済新聞出版社 2000円(税別)
初版: 2009年6月

 


著者の一人のプラハラードは”コアコンピタンス経営”の共著者です。”コアコンピタンス経営”は経営戦略の本として最もお気に入りなので、期待して読んでみました。

 

 
ビジネスのルールは常に変わっていますが、現在の流れを「顧客経験の共創」と「グローバル資源の利用」という2つの柱からなると分析した上で、これからの企業戦略を論じています。

「顧客経験の共創」というのは、AmazonのオススメやNIKE iDでのカスタマイズしたスニーカー販売といったマスカスタマイゼーションです。
実際にはカスタマイゼーションやパーソナライズといった視点よりも、そのようなカスタマイズやパーソナライズを可能とする業務システムといった視点です。

また、「グローバル資源の利用」については、各種カスタマーサービスの海外を含めたアウトソーシングや、ZARAやDellなどのような海外工場や海外サプライヤーの有機的な使用を指します。
この2つは”クォリティ”と”コスト”と見るとしっくり来るかと思います。


この2つからなる価値を顧客に提供して利益を生むのですが、著者は実際に利益を生むのは”業務”であるとしており、”共創”や”グローバル化”に対応できる柔軟な業務をICT(情報通信技術)で構築することが、これからの企業に必要であるとしています。


たしかにXMLといった明確なインタフェイスがあるので、著者が言うように(SAPやOASのような)パッケージソフトでなく作りこみを行っても情報インフラはできるという印象はあります。

そしてこのような柔軟な情報インフラをベースにして業務を組み立てる(組み立てなおす)ことができるならば、競争優位を築くことができるというのがこの本の主張になります。


普通、業務フローというのは戦略から落としていくものという印象ですが、柔軟な価値提供を行うことができる業務が競争優位の軸になるというのは確からしいと思いました。

posted by 山崎 真司 at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦略論

2009年06月24日

最終戦争論


 

石原莞爾著
中公文庫 552円(税別)
初版: 1993年7月初版(もともとは1940年9月)


歴史を知るためには、後付の解釈だけでなく、当時の思想や時代背景を知るべきだと思います。


その点で本書は、石原莞爾という当時を代表する戦争思想家が、1940年に行った講演と、1941年の講演での質疑応答をまとめたもので、当時の思想を知るヒントになります。


内容としては大きく2つになります。

1つめは、非常に大きな最終戦争が起こるという思想
2つめは、”戦争の進化”という思想


非常に大きな最終戦争というのは、アメリカ、ヨーロッパ、ソ連、(日本を代表とする)東アジアが最後の世界の支配権を争って戦うといった思想で、アメリカ対日本という可能性が高いと論じています。
これを”東洋の王道と西洋の覇道の戦い”で、”いずれが世界統一の指導原理たるべきかが決定するのであります”と表現しています。

実際に石原氏の予測は外れるのですが、今後20数年おそらく30年以内にこのような大きな戦いが行われる、と述べています。
この背景には、”戦争の進化”という弁証法的歴史観とでも言うような、(世界精神とでもいうものがあるせいか)「歴史の流れはこうだったから、今度こうなる」といった思想があります。

P.66の付表に”戦争進化景況一覧表”という表があります。
時代が”古代”→”中世”→”近代”→”現代”→”将来”といくにしたがって、戦争の間隔が短くなっていき、戦闘の指揮体系が小さくなっていき、そして、戦争の性質が”決戦戦争”と”持久戦争”を繰り返しているという主張をしています。
これは石原氏の哲学的思想が、日蓮宗の影響と結びついた結果といえます。

石原氏の思想が悪い思想だった・良い思想だったといったことでなく、1940年に何を考えられていたのか、ということを知ることができます。
あれ? 太平洋戦争を語るとき以外には読まなくていい気がしてきました...

posted by 山崎 真司 at 19:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 戦略論

2009年06月21日

失敗の本質 日本軍の組織論的研究

戸部良一他著
中公文庫 762円(税別)
初版: 1991年8月(ダイアモンド社版は1984年5月)


日本軍が、なぜ失敗したのかを組織という観点から研究しています。


ノモンハン、ミッドウェー、ガダルカナル、インパール、レイテ、沖縄の各戦いを題材に
失敗というのが何故起こるのかを分析していますが。

私の解釈としては
・曖昧な戦争目的(何が目的か明確ではない)
・組織の問題(大本営と現地軍、陸軍と海軍、司令官と参謀、というそれぞれの二重構造)

の2点がポイントだったのではないか、と思いました。


この本の中では他に、過剰適応やシングルループ学習、空気の重視(空気を重視して言わなかったとか)といったことが述べられていましたが、

過剰適応やシングルループ学習というのはキーワードとしては面白けど、実際には学習スピードの遅滞だけの問題ではないか、
空気の重視は、空気の重視をしていなくとも失敗することがある(ベトナムやイラクは空気を読んでたから起こったの?)、
と思います。


結局、後付けで理論を構築しているので、これらが正しいかは分かりませんが。


ただ、この本は”日本軍の研究”でなく、”日本軍の研究を通して、現代の組織に気付を得るもの”と捉えるならば、なかなかに面白い本でした。

posted by 山崎 真司 at 16:41| Comment(1) | TrackBack(0) | 戦略論

2008年07月13日

競争戦略論I

マイケル・E・ポーター著
ダイアモンド社 2400円(税別)
初版: 1999年6月


「戦略は戦術勝る」といったことを言います。実際には戦略といっても相手が存在する上で、実際に”競争優位”をもたらす有効な戦略といったものはどのようなものでしょうか?

こちらの戦略に対して、相手も同様なことをできるのではないでしょうか?例えば、「技術重視」や「ブランド重視」、また「製品の開発サイクルを短くして、タイムリーな商品提供を行う」といった戦略はどこでも見られるもので、戦略といったレベルではないでしょう。


企業戦略の第一人者であるポーター氏は「競争優位の戦略」でこのような”競争優位”をもたらすものについて分析しています。ただ、「競争優位の戦略」で述べられている戦略は実際に適用可能な戦略といったものは少ないかもしれません。これは相手に真似がされない(=持続的な競争優位をもたらす)という時点で、例えば「立地」や「歴史」といったものに依存するしかないといったところでしょうか。


 

キーポイントとなる概念としては、「戦略とはトレードオフ」であり、「競合他社が取れないポジションを取るといった戦略」を取るといったことです。
「戦略とはトレードオフ」というのは直感的にも分かるように、戦略は一つでないということでしょうか。もし何らかの分析によって判断無しにひとつの戦略に行きつくならば戦略といったものは存在しないということでしょう。実際には短期と長期、売り上げと利益に代表されるように(実際には商品開発や出店のような様々なレベルでの)トレードオフについて判断しないと戦略が決められないということでしょう。


また、”競合他社が取れないポジション”というのは、例えば”商品ラインアップを絞る”といった戦略があります。短期的には売り上げと利益が落ちますが、一方で商品ブランドを高める効果があります。このような戦略は、任期が3〜5年の雇われ社長では取ることが難しい戦略と言えるかもしれません。

実際には”競合他社が取れないポジション”として、”商品ラインアップを絞って、ブランド価値を高める”というのが戦略というよりも、”他社とは違うポジションを常に取ろうとする”ということ自体が”競争優位”をもたらす戦略であるといったことを述べています。


以前”競争優位の戦略”を読んだ時ほどの衝撃はないのですが、さすがに企業戦略の第一人者といったところでしょうか。キッチリ”読ませる”本に仕上がっていました。

 


他人の書評を読んで:

http://www.geocities.jp/nymuse1984/oncompetition.html

本書はそんなポーターの論文(ハーバード・ビジネス・レビューに掲載されたもの+α)を5本収録しており、それぞれに説得力のある内容となっている。
しかも、著者自身も「はじめに」で明らかにしているように、その分析対象は企業を取り巻く「業界」から、企業全体の活動(クラスターや地理的立地を含む)へと広がり、科学的にマネジメントを研究する「フロンティア」が拡大していくようすが感じられる。
 (比較的新しい内容のものが多く(90年代のもの)、情報システムなどにも言及している。)


面白い印象でした。私はこの本は各論文のバラバラ感が少しあって、そこで私は読むのをスルーしていた部分があります。

一方、こちらの書評をかいているよしえさん(←おいおい23歳かよ、すごいなぁ、と思った)は逆に広がっている様(さま)を読み取っています。一冊の本でこんなに印象が違うのか。
 
また、書評を読むと本の読み方もまったく違うアプローチに読めました。
私はこの本は比較的一つのことを述べている本として解釈していて、この本は”競争優位の戦略”で述べていた立地や技術上の自社の強みといったものをテコに競争優位をもたらすものを”戦略”とするならば、”他社と違うことを自体”というメタ戦略についてのみ述べているのではないかな、と感じました。


http://ameblo.jp/mansion-marketing/entry-10012675736.html

素晴らしい!

さすがハーバート大学のスーパースター。
本のページの角を折まくってしまった。

一度マインドマップ で整理してみたい。
具体的なコメントはその時に。


非常にシンプルで*伝わってくる*感想です。是非、マインドマップを書いてコメントしてもらいたいです。


http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001165.html

こうしたトレードオフの戦略をいくつも実行する。すると、戦略同士の一貫性、相乗効果、戦略の組み合わせの最適化という「フィット」の要素が今度は大切となる。活動間のフィットは大幅なコスト削減と強力な差別化につながる。こうして「強固に絡み合った一連の活動」は対抗するのが困難で維持可能な戦略となる。


私は感想上で”フィット”について述べませんでした。この本の上では”フィット”という概念も実際にはキーポイントとなります。

例えばDELLについて述べる時に、秀逸なSCMというものが、全社のオペレーションと密接に結びついています。このような全社のオペレーションが、差別化戦略→秀逸なSCMという戦略の策定→各オペレーションの作りこみということだとすると、これらの”フィット”は多岐に及ぶため、他社は簡単に模倣できないため持続的競争優位をもたらすということになります。
ただ、実際にはこのような”フィット”がトップダウンで設計できるものなのでなく、”フィット”の対象が創発的に生まれてきて、これらの創発的なオペレーションや作戦を企業戦略とマッチさせていっているのではないかと疑っています。果たして、サウスウェスト航空の事例研究でよく出てくるいくつかのポイントは最初から戦略の中に内包されていた(戦略をブレイクダウンした結果のもの)のでしょうか?実際には戦略を行っていった上で、発生したものを上手く吸い上げていっただけで、結果として”フィット”になったということに過ぎず。その上で、”フィット”は結果として”持続的競争優位”を作り出すにいたるものにすぎないのではないでしょうか?


 

posted by 山崎 真司 at 09:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦略論

2008年06月28日

経営戦略を問いなおす

三品和広著
ちくま新書 700円(税別)
初版: 2006年9月


カバーの返しの所に「世の大半の企業は、戦略と戦術を混同している。成長第一で事業を拡大したのに何の利益も出なかった、という企業が少なくない」とあります。


個人的な印象としては戦略と戦術を混同している企業なんてほとんどないと思いますが、戦略不在はあちこちで見られます。株式会社のサラリーマン社長では、社内のしがらみに両手両足を縛られて経営判断をしなければならなかったり、個別の事業部長が自分の功績のためにライン拡張したいといったインセンティブが働くといったことがあるのでしょうか。

 
この本では、1章で企業の売り上げの拡大は利益の拡大と全く関係ないということを実例と共に述べています。実際に日本のメーカーでは、いわゆるフルラインアップ戦略+QC活動による品質向上、といった戦略(?)を各社が取るといったことが長らく行われてきたと認識しています。


また悪評高き年次計画についても少し触れられていますが、この1章の中心は利益と売り上げの関係でしょうか。三品氏が挙げているデータの網羅性については検討の余地があるとしても、実際に同じような業態で同じような利益で売り上げが大きく異なる2社の利益・売り上げの推移をグラフとしてみると納得感があります。

実際に、この本は経営戦略を問い直してはいるものの、経営戦略がどうあるべきかという点については「戦略は人に宿る」といったいわゆるアート性について述べているにすぎません。

つまり、これは問題提起のみの本といったところなのでしょうか。少なくとも、「選択しない」という戦略モドキを取っている人にはオススメ本ですが。
 
http://dorablue.blog51.fc2.com/blog-entry-1121.html

例えば、デル・モデルで有名なデルの戦略は「市場に素早くモノを届けること」「同業他社に顧客サービスで負けないこと」「最高の性能と最新の技術を有するコンピューターシステムを、顧客の要望に応じてカスタム化して、揺らぐことのない品質水準で生産することに、トコトんこだわり続けること」「インターネットの可能性をいち早く開拓すること」なのですが、これを見て「さすがデル!」と思ってしまった人は、戦略について今まで学んだことを全て忘れて、0からこの本で学んだ方がいい。そういう本です。
 
うーん、戦略の創発性についてですね。ある企業の結果だけ見て、それをスゴイというのはどうかと思いますが。一方で、こういうものを作りだせることは戦略に依存するのではないかと思います。
 
実際に、売れる(売れた)商品を作ったことがありますが、その結果は運や営業さんの頑張りに大いに依存しますが。ただ、商品を開発する際や、会社のマーケティング戦略も大いに影響を与えていたと思います。
 
ただし、このようなアンチテーゼを定期的にぶつけることは、問題の理解には必要なことですね。 
 


http://syousanokioku.at.webry.info/200709/article_3.html

ところで、高収益企業に働く人は果たして幸せなのか? そういう会社は得てして仕事が異常にきつく、得るサラリーのコストパフォーマンスは微妙だ。売上がでかくても収益率の低い企業は悪なのか? それは会社の利益を圧迫して(余剰人員と誹られる)多くの(優秀でない)一般大衆従業員を養うことで大きな社会貢献をしている証ではないのか?
 
この本の感想とは別のところですが、これはちょっと感じるところがあります。


一つ目は、よく「大企業はこんなに稼いでいるので、もっと税金を取ればいい」ような言説があまり深い分析なしに行われることがありますが、それは企業の人が自分たちの身を文字通り削っているのではないでしょうか?一方で、世界的超大企業の社員が例えばうちは1兆円も稼いでるのにボーナスはXXしかもらえない」と言うのを聞くと、「あなたは2番目の企業の社員よりも例えば3倍の能力を有してたり、3倍の努力をしてるのか」と思ったりします。

二つ目は、企業利益と社会貢献です。例えば同じ利益でも、売り上げが大きく社員数が多ければ、社員数と売り上げの分社会貢献してるといえます。もちろん、投資家から見れば投資対効果が下がるので魅力的な企業ではありませんが。
 
 
 
posted by 山崎 真司 at 07:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦略論

2008年06月17日

戦略論大系 リデルハート

戦略研究会編集 石津 朋之編著
芙蓉書房出版 3800円(税別
初版: 2002年8月

クラウゼヴィッツの”戦争論”を読むと、必ず”絶対戦争”(”無制限戦争”とも換言できる)という概念にぶつかることになります。これは、市民革命→ナポレオン戦争という歴史の流れとしては必然的に発生した概念と言えると思います。
一方、はたして戦争は必ず”絶対戦争”に向かうのか、それとも”絶対戦争”の反対概念である”制限戦争”に向かうのか、という疑問があります。


この一つの解としては、”戦争論”の後に出版されたジョミニが”戦争概論”に書いていますが、いささか理想論を掲げているだけという印象があります。

他の”制限戦争”論者として有名なのがこのリデルハートです。リデルハートはイギリス人で、主に第二次世界大戦前後の戦略論者です。彼は”間接アプローチ戦略”という概念を提示しています。この”間接アプローチ戦略”は明確な定義はありませんが、基本的には奇襲や相手の弱点を直接攻撃し殲滅でなく、相手に勝利するといったことです。例えば、航空機の発達により、全滅をさせなくとも敵の本部を討つ、また、相手を殲滅させなくとも戦車が敵陣の中央を分断することにより相手の士気を下げて敗走させる(いわゆる電撃作戦)といったことを含みます。


実際にこの本を読んだ衝撃としてはクラウゼヴィッツと比べると非常に弱いのですが、”制限戦争”の利を読み取る本としては、ジョミニの本よりはだいぶ説得力があるのではないか、と思いました。ただ、ジョミニにしろ、リデルハートにしろ”制限戦争”論者は論拠が強くなく、理想論的であるなぁ、というようには読めてしまいました。

 
他人の書評を読んで:
と思ったのですが、みつからず... orz
 
 
posted by 山崎 真司 at 22:04| Comment(2) | TrackBack(0) | 戦略論

2008年04月10日

戦略論大系 モルトケ

戦略研究会編集 片岡徹也編著
芙蓉書房出版 3800円(税別
初版: 2002年3月

 

内容:
プロイセンの参謀総長として、普墺戦争(プロイセン・オーストリア)、普仏戦争(プロイセン・フランス)を勝利に導いた、モルトケについての戦略論です。この2つの戦争を中心として、プロイセンを外交で支えたビスマルクと、戦争で支えたモルトケが第一次世界大戦前までのドイツの礎を築きました。

モルトケは学者でなく実務家ということもあり、一冊の本という形でなく各所の論文からの抜き出しでモルトケの戦略論・戦争論が約200ページほど記載されており。残りの約100ページは解題ということで、著者によるモルトケの影響やモルトケの生い立ちなどについて述べています。
ちなみに、モルトケは参謀総長になるまで大きな部隊を率いたこともなく、長らく無名でいたいわゆる本の虫というタイプの軍人です。モルトケの生涯を読むと、どうしても銀河英雄伝説という小説の主人公のヤン・ウェンリーを思い出します(ヤンのモデルがモルトケというのはありそうな話です)。
 

感想:
軍事方面は浅学なんですが、モルトケは

・鉄道を重視した戦略
・事前に徹底的に調査・準備を行う
・都度指示をするのでなく指揮官に任せた指揮スタイル(訓令型指揮法?)
・戦史研究や、以前の戦争を研究する文化を創った

といったことを中心として勝てる文化をプロイセンにもたらしたのかと思っています。


指揮官としては

「はるか前から詳細に準備してあった命令が、完全に実施されることはまずありえない」
「重要事項が達成されるのは、まったくの偶然か、多くの二義的事項に全然妨げられなかったためか、単に環境に恵まれたに過ぎない」
といった言葉に代表されるような現場志向と、一方で普仏戦争前には戦場の調査を詳細に行ったというような周到さとを併せ持った組織をつくりあげました。
この時点で他国の組織はこのような状態ではなかったようなのですが、このことを一般に(例えば会社組織に)そのまま適用できるかどうかは分かりません。ただ一ついえるのは、組織・文化がプロイセンに持続的競争優位をもたらしていたということでしょうか?
企業の戦略論ではブランドや立地、取引先や仕入先との関係が持続的競争優位をもたらすということを言うかと思いますが、プロイセンは立地や工業力といったものでなく、組織文化だけで競争優位を作っていたのかな、と思いつつ、逆にビスマルクやモルトケがいた時代に”稼いだ”国力を使ってしばらく安定していたのかな、とも思いました。
 
posted by 山崎 真司 at 22:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 戦略論

2008年04月03日

軍事革命とRMAの戦略史

マクレガー・ノックス/ウィリアムソン・マーレー編著
芙蓉書房出版 3700円(税別)
初版: 2004年6月

内容:
サブタイトルは”軍事革命の史的変遷 1300〜2050年”とあります。イギリス及びアメリカの歴史学者・軍事学者の共著作で、原著は2001年発行の"The Dynamics of Military Revolution 1300-2050"です。

ちなみに、軍事革命(Military Revolution)というのは、広範な社会的・政治的変化によってもたらされたもの(例えば、市民革命によって軍隊で大規模な徴兵が可能になったり、鉄道によって補給線が伸びたり)であり、RMA(Revolution in Military Affairs)というのは純粋に軍事的なものが契機となったもので、本書の訳注ではRMAの邦訳を革命的軍事改革と訳しています。
※ただし、書中ではRMAと記述


この本では、14世紀のエドワード3世から始まり、アメリカの南北戦争、プロイセン、第一次世界大戦、第二次世界大戦等の時代におけるRMAをそれぞれ説明しています。


感想:
元々は、ゲイリー・ハメルの経営の未来を読んで読み始めたものです。基本的にはこの本は軍事史ですが、RMAという切り口から述べていますので、基本的には「何が競争優位か?」、「何が持続的競争優位か?」ということを明確にしています。

一般企業でも競争優位を築くことは可能ですが、持続的競争優位を築くことは難しいですが、実際の軍事上でも同様です。通してみていると、武器などのテクノロジーは一回の戦争において競争優位を生み出すことはありますが、ある期間(20年とか50年とか)の競争優位を生み出すことはなかったようです。
この本を読むと、武器や戦術などの優位だけでなく、反省する組織だったりといった組織風土や、軍事上の訓練と教育といった軍隊文化だったりしたものも優位を生み出すということが分かりました。また、実際に他の本やテレビなどで受けていた印象よりも、新兵器が戦争に与える影響が小さかったのだ、と感じました。


他人の書評を読んで:

特にみつかりませんでした X_X)
posted by 山崎 真司 at 21:45| Comment(0) | TrackBack(1) | 戦略論

2008年03月16日

補給戦

マーチン・ファン・クレフェルト著
中公文庫 1429円(税別)
初版:2006年5月

内容:
原著は1977年で、元々は原書房から1980年に出ていたようですが、中公文庫で復刊したものです。著者は1946年オランダ生まれのユダヤ人で、1950年にイスラエルに移民して、その後、ヘブライ大学の歴史学教授になっています。

本書は戦争において、補給が与えた影響はとても大きいが、これまでの補給の分析は定性的なものが多く、定量的に補給を分析して戦略や戦争にどのような影響を与えたかを分析しています。内容は8章立てですが、ある期間ごとの戦闘において補給というものがどのような影響を与えたかを分析しています。主な章では、16〜17世紀、ナポレオンの時代、モルトケの時代、第二次世界大戦のヒットラー(ドイツ本土)、第二次世界大戦のロンメル(アフリカ戦役)、第二次世界大戦の連合軍、といったあたりの戦いを分析しています。


感想:
元々はゲイリー・ハメルの「経営の未来」で引用されていた「軍事革命とRMAの戦略史 軍事革命の史的変遷1300〜2050年」を読もうと思っていたのですが、その前に軍事史系の本を読んでおこうとして読んでみました。

ポイントとしては、16世紀頃から、戦争での動員人口が増えた(これ以降急激に増え続けている)、その結果として軍隊の食事が問題になってきた。初期は軍隊が動き続けて、現地徴発を続けることでなんとか軍隊が食べていくことができた。それ以降は1軍の規模を小さくしないと現地徴発だけでは食べていけない。これらのことが戦略自体を左右するようにもなる。
また、それ以降は軍隊が大きくなっていくごとにさらに補給自体の難しさが増していった。鉄道や自動車が出来てもその問題は解決するどころか、食糧だけでなく武器や弾薬の重要性が増して、補給による制限がますます大きくなってしまった。


結局、16世紀から補給が問題になり、理想的な、もしくは机上での最適な戦略と、実際に実行可能な戦略の間のギャップができていたが、このギャップは第二次世界大戦の時期までではますます大きくなっていた、といったところでしょうか。

特にこの本を読んで現実社会に使えるという知識はあまりありませんが、歴史を解釈する上で、技術力や農業生産力や戦略だけで考えずに、補給というものが戦略を束縛していることを踏まえて解釈しないといけないということが分かりました。
微妙にここにもメモを書いてます。


他人の書評を読んで:

http://bookguidebywingback.air-nifty.com/military/2006/06/post_c4fa.html
これらの結論が、可能な限り正確な資料を精査し、計算することによって証明される。個人的に印象に残るのは、駅や港湾の荷捌き能力に戦争そのものが強く制約されることだ。”兵站線”を守れても、大量の荷が捌けなければ意味がない。このへんの能力は、現代ではアメリカ4軍だけが実際の戦争を戦えるだけのものを持っているといえる。
言うまでもなく(?)システムはそのボトルネックに制約されます(TOC..制約理論を参照してください)。この本の中では、ウイングバックさんが書かれているように、駅や港湾の積み降ろし能力に制約されます。


http://koppa.blog.ocn.ne.jp/koppaoukoku/2006/10/post_9d8b.html

しかし、これを読むと、軍事的なかがやかし戦果というものが、結構危ういものだったり、それゆえにその戦果は指揮官の天性によるものだなというこを思い知りました。
軍事的な戦果が指揮官の天性によるものか、というのは分かりませんが、補給というものが常に非常に危うく、しかもほぼ常に軽視されてますので...それが戦争自体を左右しそうです。


http://www.specialprovidence.net/books/logistics_war.html

実際にはアメリカ南北戦争のはずで、北軍はバリバリ鉄道を建設しながら進撃していった歴史があります。また日露戦争もロシア側は単線のシベリア鉄道に補給を頼って、ついには業を煮やして全ロシアから貨車をかき集めて片道輸送(満州に着いた貨車は補給物資を下ろした後線路際に放り出して投棄)により輸送力を上げるなどというとんでもない手段に出る一方、日本側は大連に陸揚げした補給物資を運ぶために物凄い勢いで南満州鉄道の改軌(ロシアゲージから日本狭軌へ、戦後標準軌に再改軌)をするなど、鉄道輸送が死命を制した戦いとして知られています。そうした点についても触れて欲しかったものですが、それでも第2次世界大戦以前の補給の実情について詳しく書かれている珍しい本なので価値があるでしょう。
南北戦争や日露戦争については全く知らないのですが..本書中でも線路のゲージの話がありましたが、実際に防御面ではゲージの差異ということすら影響を与えるということですよね...
posted by 山崎 真司 at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦略論

2008年03月02日

経営の未来

ゲイリー・ハメル、ビル・ブリーン著
日本経済新聞出版社 2200円(税別)
初版: 2008年2月

内容:
サブタイトルは「マネジメントをイノベーションせよ」となっています。原著は2007年で「コア・コンピタンス経営」の著者として知られるゲイリー・ハメルの新作です。「コア・コンピタンス経営」は比較的どこの企業でも適用できる内容でしたが、こちらは...どうでしょうか?

内容としては「マネジメントをイノベーションせよ」といって思いつくマネジメントの改善の方法でなく、「そもそもマネジメントはこういうものという既成概念があるのをパラダイムシフトしましょう」ということになります。小売業のホールフーズ、製造業のW・L・ゴア、IT企業のグーグルの3社の組織の解説と、現在のマネジメントの課題を述べてます。


感想:
ハメルの新作なので戦略論というものだと思ってたのですが、どちらかというと組織論でしょうか?組織論といっても組織の縦横とかクロスファンクショナルグループとかでなく、「そもそも、その組織形態がベストなの?」という疑問をあげています。

つまり、社長がいて、事業部長がいて、部長がいて、課長がいて...というよくあるパターンの会社の組織というのは果たしてベストなのだろうか、ということです。実際に私がリアルに知っている会社はすべてこのパターンで、自由度こそ多少違いますが全ての指揮系統や意思決定パターンが同じです。
こんなそもそも論に疑問を持ったことがなかったので、この疑問提起が大衝撃でした。


最も顧客志向な会社や、最も製品の品質が高い会社でなくて、最も適応力のある会社が生き残るという考え方があると思いますが。その手段として、下位の階層やミドルの知を上にあげたり、情報を社内で回すシステムといったことはよく言われいますが。

そもそもその社長→〜〜→平社員という組織でいいんでしょうか、と。


他に、読んでて面白かったいくつかの点として、
・(ホールフーズの評価について)各店舗は年に10回、本社の幹部と地域リーダーによって評価される。
基本的に会社の運営については(実は会社だけでないけど)、いかに頻繁にフィードバックを正確にフィードバックするか、ということだと思っているのですが、年10回というのは驚きでした。是非、真似します。


・デジタル技術が創造のツールを急速に民主化し、人間の想像力を自由に羽ばたかせている。〜〜(省略)〜〜そこで質問だ。あなたの会社は、これらの創造の才に富む人びとが十分権限を与えられたビジネス・イノベーターになる手助けをするために、どのようなことを行ってきたか。
個人のブログとか、ニコニコ動画とか見てると本当にスゴイことになっています。マーケティングツールとして、こういう能力者の力を使いたいなー、というのはよく考えますが......
昔は個人でやってるデザイナーの方に(プログラムの)ウィンドウやボタンのデザインを頼んでたりしました。でも、こういうのもベンチャー企業などでは出来ても、普通の企業では難しそうですね。書かないといけない申請書の数と社内調整を考えたら憂鬱(もしくはただの鬱)になりそうです。

・(ミドルアウトで会社を変革する時に)政治的リスクを最小限にしよう
会社で誰かの評価や給与に関係するようなものを変えようとするな、という警句です。危ないです。別件で考えていたことがあったのですが、思わずやってしまうところでした。危ない危ない。経営の未来、とはあまり関係ないですね。


他人の書評を読んで:
http://blog.goo.ne.jp/eliesbook/e/640cae1b081f20d9f56d74d66f8e7434
いつも超楽しみにしてるメルマガです(この本はメルマガ読む前に店頭で即買いしましたが)。

今読まずしていつ読もう。ここ2、3年で読んだ中でも最高傑作のうちの一つです。
と書かれています。そこまでベストかというと疑問もありますが、読む前に想像していた企業戦略レベルでなくて、そもそもの所を
われわれの「常識」にメスを入れています。
といった所は素敵でした。

http://ameblo.jp/adman/entry-10074873606.html
自分の今の仕事にトレースしやすい、イメージしやすい論の展開はさすが。

え”ーーーーっ。自分の今の仕事にトレースしやすい...ですか....うーーん。もちろん、そもそも会社でのポジションが違うのでしょうが、この本を読んでそこまでブレイクダウンしたイメージができませんでした。ううむ。想像力不足....ですよね... X_X)
読み直しの時にはもちょっとブレイクダウンできるように努力します。


 

posted by 山崎 真司 at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦略論