2009年08月10日

魂の重さは何グラム?

レン・フィッシャー著
新潮文庫 590円(税別)
初版: 2009年4月(単行本の”魂の重さの量り方”は2006年1月)

 

 
 
サブタイトルが”科学を揺るがした7つの実験”とありますが、特に重要な7大研究についてというわけではありません。著者は1999年にイグ・ノーベル物理学賞を受賞した有名な物理学レン・フィッシャーです。


科学は”真実と真実らしきもの”を切り分けますが、その切り分け方というストーリーを面白おかしく、軽快な語り口で紹介している科学実験にまつわるコラムがこの本です。
ある事項に関する解釈を2つの視点(二人の科学者だったり、常識と新解釈だったり)が交差しながら、実験によって収束していくというのは科学をモチーフにしつつも、起承転結のある歴史であるとも言えます。


7つの実験については
1.魂の重さを量る
2.ガリレオvsアリストテレス 慣性はあるか?
3.ヤングvsニュートン 光は波?粒子?
4.雷について 避雷針の正しい形は?
5.変性と金 ロバート・ボイルと錬金術
6.人と電気 電気治療と蘇生
7.生命とは何か シュレディンガーとワトソン・クリック
といったところでしょうか?


科学的にはかなりガチンコですが、さすがにイグ・ノーベル賞を受賞しているだけありキャッチーで面白いです。
・本物の金の調べ方や、それに触発されて著者が子供の頃に、自分のでっぱってる所の密度を測ろうとした
・ロイ・C・サリヴァンという人は人生で7回雷に打たれたが生きてた。70過ぎで失恋して自殺したけど...
・ヒッグスボソンの簡単な説明
・電気を使って、死体を動かす見世物
といった思わず誰かに話したくなる小ネタ満載です。


読むためには高校生レベルの科学の知識があった方が楽しめますが、ある理論にいきつくための対立した理論や、実験での実証といった科学として必要なプロセスを楽しみながら感じることができます。

posted by 山崎 真司 at 22:21| Comment(0) | TrackBack(0) | その他、一般

2009年05月24日

自然現象と心の構造

カール・ユング、ウ”ォルフガング・パウリ著
海鳴社 2000円(税別)
初版: 1976年1月

分析心理学で有名なユングと、パウリの排他律やパウリ効果:)で有名なパウリの共著の本です。

分析心理学と物理の巨匠のコラボ本ということですが、
これはインタビューや往復書簡ではありません。
ユングのシンクロニシティー(共時性)に関する本と
パウリのケプラーに対する元型論の影響といった本です。


シンクロニシティーというのは、何らかの非因果的な(今の科学で説明できない)偶然の一致といったものです。
ユングはこのシンクロニシティーについての説明として、
ESPカード、婚姻したカップルと星占いの関係、といったことから
シンクロニシティーを証明しています。

実際に一見数学的でかなり厳密に、シンクロニシティーがないと説明がつかない、
といったことを言っていますが。
実際には実験に問題があったといったところでしょうか
(ギロビッチの”人間この信じやすきもの”に詳しいです)

ちなみにロバート・キャロル著”懐疑論者の辞典(下)”

によると

「シンクロニシティの根拠にはどういうものがあるのか?
何もない。
ユングの弁明もとてもばかげたものなので、
改めて述べるのもはばかられる。」

だそうです。


パウリのほうはケプラーについてのことですが。
ケプラーをテーマに元型論を話されても...といったところです。

もちろん、ケプラーは有名なんですが...
ここをコメントするのはもうちょっとケプラーの本を読んでから、と。


他人の書評を読んで:
書評がみつけられませんでした... ;_;)

posted by 山崎 真司 at 21:43| Comment(0) | TrackBack(0) | その他、一般

科学史はパラダイム変換するか

村上陽一郎著
三田出版会 971円(税別)
初版: 1990年11月

科学技術を先導する30人というシリーズの一冊で、那野比古さんがインタビューした対談です。
ポイントとしては

1.科学史を捉えるにはその時代背景を読まないといけない
2.科学史は科学哲学と強いかかわりを持つ
3.科学と技術は相互に発展してきたが、最近は技術の発展が先にある

といったところでしょうか。

1.としては、歴史全般において言えることですが。
社会背景や技術の進歩を無視して、科学的な発見のみを語るというのはありかどうか、ということがあると思います。
よく言われているように、ニュートンやケプラーはその発見の結果のみで「近代科学の祖」と見るのでなくて、
時代の中で読み解かないと読み違えることがあると思います。


2.については私は科学史と科学哲学は完全に別物と捉えていたのですが、
村上氏によると科学が他の手法よりも優位であるということを示す手段として

「自分たちの学問の系図を組み立てたほうが科学史になり、
科学の方法論が他のものと違って信頼がおける、優れたものだと立証しようとしたほうが科学哲学という領域になった」

ということです。


3.については以前は科学的な理論を実証しようとしても技術が足りなかったため実証できなかったことが、
最近は技術の進歩で理論はたいがい検証できてしまう、
というようになったこということです。

少し前ならばLHCやカミオカンデなどのようなもので実験すること自体が無理だったのに、
最近は相当に実験での検証能力があがっているということがあります。

シミュレーションといった手法を別にしても、
以前は理論の実証が自分よりも後の世代になってから行われていたようなことが
すぐに行われるようになったというのは確かに思います。


これまで科学史というのは読み物や時代背景の解釈のために読んでいたのですが、
逆に科学史というもの自体をもっと読むということについて考えさせられる本でした。
なんだか、後ろ向きな気もしますが...


他の方の書評を読んで:
さすがに古い本か、書評はみつかりませんでした...うーん。

posted by 山崎 真司 at 19:01| Comment(0) | TrackBack(0) | その他、一般

2009年04月29日

未来を予測する技術

佐藤哲也著
ソフトバンク新書 700円(税別)
初版: 2007年8月


タイトルは若干、大きいですが、佐藤氏は地球シミュレータセンター長ということで、
内容は”地球シミュレータ”とその周辺の概説書です。

これまでの要素還元の科学(対象をどんどん分解していって、働きを解明する)から、
システムの科学(複雑なシステム全体を扱う)への転換について例を交えながら説明しています。


シミュレーションで科学が進むのかというとちょっと違うかな、とも思いますが。
工学的なものが科学を推進するというのはこれまで何度も行われてきたことなので、
そういった意味では科学なんでしょうか。


地球シミュレータは非常に高速なコンピュータの集合体であり、
これによって地球を10km四方に区切って
それぞれの場所での天候をシミュレーションし地球全体の研究をしたり、
車を1000万の格子に分けて衝突のシミュレーションをしたり
といったことを行います。


この背景にはシミュレーションスタイルとでも言うべきトレンドがあると思います。
コンピュータの性能の向上に伴って、
理論の積み重ねでなく、
コンピュータのアルゴリズムの変更やパラメータの変更によって、
さまざまな事象をシミュレーションで検証できるといったことがあります。


もちろん、このようなシミュレーションスタイルは、
ジャンクな論文を生み出すエンジンにもなりますが、
他方では非線形な問題(≒最適解が計算によって求めづらいような)を
研究するには強力なツールにもなり、
”21世紀はシミュレーション文化の世紀”とも佐藤氏は書いています。


このためには、全体的なシミュレーションが必要となりますが、
これは要素還元的な視座から作られたミクロのシミュレーションと、
全体的な視座から作られたマクロのシミュレーションの複合になります。


読んでいるといろいろとシミュレーションをしたくなってきますが、
実際にはこの本は21世紀の足音を感じるための本というのが正しいところでしょうか。

他の方の書評を読んで:
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50896392.html
見てのとおり、本書は地球シミュレータのトップが書いた本であり、当然地球シミュレータも登場するのであるが、しかし本書は地球シミュレータ「だけ」の本ではなく(それはそれで別に書いて欲しい!)、そして地球シミュレータは、ただの超高速超巨大超高額コンピュータではない。

世界のコンピュータ性能のリストに地球コンピュータが載っているのを見ていて、
国産だしちょっと嬉しかった反面、
”一体何?”という思いがありました。
どちらかと言えば、地球シミュレータは大きなコンピュータでしかなかったのですが、
これを読むことで”熱さ”を感じることができました。


http://blog.goo.ne.jp/go2c/e/99662016572d891c9f16cb8e992283b2

組織でもマクロ(経営戦略)だけが先走ってミクロ(従業員個々の行動やインセンティブ)が追いつかないケースや、ミクロの議論からのボトムアップを優先した結果合成の誤謬に陥ってしまいマクロ的にはとんでもない意思決定をするケースはままあります(一連の偽造事件などは典型かと。)。
また、組織の特性だけでなく、個々の管理職のマネジメントのスタイルもマクロ寄りの人とミクロ寄りの人に分かれるような感じがします。
そして自分のスタイルにない部分を補完してうまくバランスをとった意思決定をするというのはなかなか難しいことです。

”未来を予測する技術”とは違う話ですが...
最後のマネジメントスタイルがマクロ寄りとミクロ寄りというのは面白い視点です。
マネージャとリーダーの対比というのが近いのかもしれませんが。
マクロとミクロの乖離については、残念ながらシミュレーションが教えてくれるわけではないので、
結局はそこを埋めるアルゴリズム(=知恵)でシミュレーションの精度を高める必要があるということでしょうか。

posted by 山崎 真司 at 18:23| Comment(1) | TrackBack(0) | その他、一般

2009年03月31日

絵でわかる進化論

徳永 幸彦著
講談社サイエンティフィク 2000円(税別)
初版: 2001年6月


ダーウィンの”種の起源”に絡めて読んでみました。

進化論の現在というのが俯瞰できるつくりになっています。”絵でわかる”とタイトルに書いてありますが、それほどイージーではありません。
ダーウィン、メンデルといったところを解説して、そこからフィッシャー、ライトといった現代の(?)進化論や、今西進化論、中立説といったトピックについて述べられています。


また、著者は人工生命が専門のようで、遺伝的アルゴリズムや人工生命についても優しく(そしてそれなりに詳しく)解説されており、このあたりが他の進化論の本とは一線を画しているのではないかと思います。


ちなみにこの本はほとんど実際の生物を例に出していないというのが特徴となっており、ここが種の起源とは好対照となっています。この本では、カミナルキュルスという分類学の実験のために想像(創造?)された架空の生物を例に出しているというのも面白いところでした。
なんとも可愛いカミナルキュルスがインパクトを与えているのに、内容はめちゃくちゃ理系な本というのもダーウィンとは好対照かもしれません。


他の方の書評を読んで:

みつかりませんでした....うぅうぅ。
私としてはかなり面白かったのですが...

posted by 山崎 真司 at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | その他、一般

2009年03月23日

種の起源(上、下)

チャールズ・ダーウィン著
岩波書店 860円(税込)(上下とも)
初版: 1990年2月(上下とも)


有名なダーウィンの本です。今年は、ダーウィン生誕200年、種の起源出版150年ということで、ちょっとしたブームになっているところでしょうか?最近読んだ多くの本で、進化論について述べられていることもあって、かなり興味津々で読みました。実際、古典なので読みにくいかもしれないと思っていたのですが、翻訳のためかダーウィンの文章力のためか、かなり読みやすかったです。

上巻は主に自然選択(自然淘汰)についてです。当時も品種改良とかは行われていて生物は進化するという概念はあったのですが、種というものはそれぞれ別のものから進化してきたと考えられていました。これを、自然選択というキーワードを軸に、1つの種が枝分かれしていったということを述べています。
下巻は地理的な分布や、化石といった視点から自然選択の説について論じています。主な争点としては、なぜ化石には中間種がいないかといったところでしょうか。これは、たとえば種A→種B→種Cと自然選択によって漸進的に進化をしていくという場合に、なぜ種Aと種Cの化石はたくさんあるのにその中間の種Bの化石がみつからないうということが起こるかということになります。


論の進め方も、自然選択という証明できない事項のため、演繹でなく帰納的な推論の積み重ねではありますが、実際に家の庭の草を数えたり、種子が海水に浸されて何日持つか(発芽するか)といった実験を交えたりしながら、できる限り科学的に、また非常に慎重な書き方をしており、科学者のスタンスとして参考になるものでした。

また、もっとも印象に残っているのは、ダーウィンの幅の広さでしょうか。帰納的な推論ということもあるためか、動物と植物、現代とこれまで(化石による推測)を統合しながら書き上げており”さすが博物学者というはこういうものか”と感じさせられるものでした。
 
posted by 山崎 真司 at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | その他、一般

2009年03月22日

こんなにわかってきた素粒子の世界

京極 一樹著
技術評論社 1580円(税別)
初版: 2008年10月

昨年、流行に乗って講談社ブルーバックスの南部先生著の”クォーク 第2版”を購入したものの、あまりに自分の基礎知識がトホホなもので購入しました。
タイトルや表紙は軽い感じなのですが、内容は意外と濃いです。というか、濃すぎてわからないとこいっぱいです。とりあえず、量子論の歴史から入って、量子力学の基礎、反粒子、クォークやファインマン図など一通りの説明が行われてます...まぁ、あんまり理解できませんでしたけど。かなりやさしく書かれていたので、これまで何度チャンレジしても討ち死にしてた私でも雰囲気だけはつかめました。
また、今話題のLHC(Google Earthが入ってる人はLHCで検索してみるといいです。ない人もmaps.google.comでLHCで検索して、衛星写真にすると、大きな輪が見えますけど)の説明や、ヒッグス粒子、CP対称性の破れなどについても触れられており、今話題のキーワードがどのあたりに位置しているかを知ることもできました。
本を読むにあたっては数式や難しいところを飛ばしながら読んでいたのですが、なんだかんだで意外と時間がかかった本ですが、このジャンルをこんなにやさしく書いた本ははじめてでした。意外とオススメです。ちょっと骨はありますが。
他の方の書評を読んで:
残念ながら、他の方の書評がぱっとはみつけられませんでした.. orz
posted by 山崎 真司 at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | その他、一般

2008年12月21日

アリの生態ふしぎの見聞録

久保田政雄著
技術評論社 1580円(税別)
初版: 2008年10月


1988年初版の講談社刊「ありとあらゆるアリの話」に加筆修正したもので、日本蟻類研究会の設立メンバーでアマチュアアリ研究者の久保田氏の本です。

他の種の働きアリをまさに奴隷のように使うサムライアリや、葉を肥料に巣の中でキノコを栽培するハキリアリ、ジャンプして天敵から逃げるアギトアリや仲間を守るために爆発して周りに毒を撒き散らすクシヅメハリアリなどの変わったアリについてや、アリの生態について述べています。
いつか僕もアリの巣にもそうですが、アリへの愛を感じる本です。
それにしてもアリというのは不思議な動物です。やはり社会的動物というのは興味深いですね。
 
 
posted by 山崎 真司 at 20:49| Comment(0) | TrackBack(0) | その他、一般

いつか僕もアリの巣に

大河原恭祐著
ポプラ社 1400円(税別)
初版: 2008年2月


アリの研究家によるアリ関係コラムといった本です。装丁がオシャレ本っぽいのですが、中もサクサク読めてアリ知識も深まりつつ、同時にアリ愛も深まる本です。きっと、アリが飼いたくなります。


最初にアリの基本(?)の後に、アリの生態とアリ研究者の生態の説明、そして遺伝子から何故アリが社会的なのか(他人のために働くことを何故するのか)を説明しています。

ちょっと省略して書くと、働きアリは全て同じ遺伝子(ちなみにメス)なので、別の女王アリのために働くことが合理的になります。
巣のメスが全て同じ遺伝子なので、女王アリのために働くことは自分の遺伝子を守ることになり、女王アリの子孫が残ることは自分の子孫が残ることとイコールです。

実際のアリにはいろんなパターンがあるようなので、必ずしも上のような説明にはなりませんが、上がよくあるパターンです。


また、この本はアリの本であると共に、アリ研究者についての本でもあります。アリ研究者が日々どんな生活をしているかを垣間見ることができ、以前流行った「動物のお医者さん」的な面白さも持っています。

アリについての学術的なことを知るというよりも、アリとその周辺を散策するというコラム本です。
ちなみにアリはハチの親戚で、シロアリはゴキブリの親戚らしいです。ふーん。
 
posted by 山崎 真司 at 20:28| Comment(0) | TrackBack(0) | その他、一般

今年のまとめ

今年ですが、当初予定を入れた本として以下の本がありました。
 

VEフランクル 「夜と霧」
ジャック・デリダ 「声と現象」R
ウンベルト・エーコ 「完全言語の探求」(再読)
ヴィトゲンシュタイン 「講義録」(←正式なタイトル忘れた)(再読)
ゼノン他著「初期ストア派断片集1」
ホルヘ・ボルヘス 「論議」
マイケル・ポーター「競争の戦略」(再読)
セオドア・レビット「マーケティング論」
ダニエル・ゴールマン「ビジネスEQ」

 
結局読んだ本が

VEフランクル 「夜と霧」
ゼノン他著「初期ストア派断片集1」
ホルヘ・ボルヘス 「論議」
マイケル・ポーター「競争の戦略」
ダニエル・ゴールマン「ビジネスEQ」

 
となりました。ヴィトゲンシュタインは論考を読み中(読むと思ってなかった)。そしてヘーゲルは読まないと思ってたけど、何故か一冊読んでました。
 
というわけで来年の目標です。
 

ウンベルト・エーコ 「完全言語の探求」(再読)
セオドア・レビット「マーケティング論」
ヘーゲル「精神現象学」

 
というわけで、3冊だけです。
 
おそらくこれ以外に、諸事情あってか、「リスク」、ポアンカレの「科学の価値」か何か、「自然界における左と右」あたりを読みそうです。
 
あと、ヘーゲルは何かもう一冊(エンチクロペディー系の何か)も。
 
来年こそはまったり読もう。ちなみにやっぱり年100冊以上は読んでしまいました。150はいってないのでほぼ目標通りですが、まだ軽い本が多いかも。年100冊以下に抑えたい。
 
posted by 山崎 真司 at 01:12| Comment(0) | TrackBack(1) | その他、一般