ジェフリー・サックス著
早川書房 2300円
初版: 2009年7月
原題は"Common Wealth : Economics for a Crowded Planet"です。
コロンビア大学地球研究所所長で、国連ミレニアム・プロジェクトのディレクターも勤めているジェフリー・サックスの著作です。
”エコ”や”グリーン”といった視点の本は多数書かれていますが、分析も含めて対策を書いている本は非常に少ないと思います。その点で、この本は対策まで記述した本です。
似た内容にトーマス・フリードマンの”グリーン革命”がありますが、”グリーン革命”は技術的な点に偏っており、アメリカ視点で国家レベルまでの対策までとなっていますが、この”地球全体を幸福にする経済学”は国際レベルでの対策となっており、まさに経済学という様相となっています。
所得格差は国内レベルのみでなく国際レベルで見ても社会システム全体を不安定にする要因というのは理解できますし、また持続可能な社会(地球環境へのダメージを防ぐ)という視点での地球環境を共有資源としてみると、これらの問題は経済学的視点で考えなければならないといえます。
所得格差の問題というのは主にアフリカにおいて、インフラが未整備(主に農業インフラ)であること、医療のレベルが低いこととがメインでしょうか。
また、持続可能な社会という視点では、化石燃料などによるCO2の排出の問題と、人口爆発によるエネルギー・水・食料ストレスの問題が中心でしょうか。
これらの問題について、国連ミレニアム・プロジェクトでは各種提言を行っていますが、サックスによると、これらの問題はそれぞれ解決可能で、この本で提言しているすべての問題を解決するには支援国のGNPの2.4%の予算が毎年あれば対策可能(もちろん永遠でなく、ある時点まで)としています。
言うまでもなく、人口爆発についても、地球温暖化についても、これらの対策については放置すればするだけ対策コストは増大していきます。
こういった問題を認識しながら、これらの問題を放置するのは世代間の所得移転といえると思います。
アフリカの問題は彼らの問題という視点でなく、世界の問題は我々の未来の問題であると思いました。
グリーン革命がテクノロジーに寄りすぎていた分、こちらの方が納得感がありました。
他の方の書評を読んで:
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51270486.html500ページ近い大著であるが、原題の"Common Wealth"をおさえながら読めば、あっという魔によめてしまう。著者の提案は簡単だ。「Their problems ではなく、Our problems として扱え」。その点に関して、米国は正しい選択をした。原著が上梓されたのは2008年3月。次の大統領はまだ決まっていなかった。彼らが選んだのは、かたくなにまで"they"を避け、"we"を掲げる人だった。
TheirとOurという視点は面白いです。このTheirは、”アフリカや他の国”でもあり、同時に”わが国の未来”でもあると思います。
http://d.hatena.ne.jp/lackofxx/20090818/1250628158
地球交響曲のテーマもそうだけど、まずは問題意識を持つこと。そしてそれを自分にも貢献できる課題だと理解すること。そこがスタートライン。
その後はみんな、自分の意見もあるだろうから、よく考えて行動すればいいと思うが…。とはいえ、いまの単純な選挙モデルだとなかなか上手くいかないところがあるのも確か。バザールモデル、もう少し何とかいかないものかね。
ある程度の税金があり、それ以外は寄付というシステムになっていればバザールモデルといったシステムも成り立つ可能性がありますが。現状の民主主義のシステムにおいて、このような共有地問題を解決するのは難しいと思いました。やはり国連というシステムが大事なポイントということだと思います。
posted by 山崎 真司 at 21:06|
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