2008年05月04日

ブランドなんか、いらない

ナオミ・クライン著
はまの出版 3400円(税別)
初版: 2001年5月

学生にとって教育が義務であり学校と学生の関係が師弟関係的だったものが、教育とは消費で学校と学生の関係が客と店の関係に変わってきているという言説があります。


さて、この「ブランドなんか、いらない」は原題は”NO LOGO”というもので、カナダのジャーナリスト、ナオミ・クライン女史が書いた反ブランド論です。世界中でのブランド化やスーパーブランドによる殲滅戦について書かれています。反ブランド論なのですが、逆にブランド論としても読めてしまいます。著者の意図とは反してますが...


「ブランドなんか、いらない」の4章は「ブランドの学校進出」というタイトルで、アメリカを中心とした企業の学校への進出が述べられています。

小学校向けの「チャンネル・ワン」という番組では12分番組の合間に2分間のCMが入っていて、そのかわりにAV機器やコンピュータ等を学校が無料で受け取るといったことをしています。このCMは、止めたり教師がボリュームを変えたりすることが契約で禁止されています。
また、ある中学校ではペプシと学校が契約していて、「ペプシ **中学の公式飲料」という看板が道路脇に立っています。さらに、学校との契約書には「ペプシ製品の販売機会の拡大に協力するよう、最大限の努力をすること」という条項が含まれています。
これらは無数にある話のうちの2つの例にすぎず、この本の記述によると多くの学校(小学校から大学まで)でこのような学校のブランド化が進んでいます。日本ではここまでの話は聞いたことがありませんが、今後このような方向に進むことが想像されます。


日本でもこのような学校のショッピングモール化が進むのでしょうか?このショッピングモール化は、学生の”お客”化を進めることになるのではないかとこの本を読みながら考えました。


他人の感想を読んで:
http://blog.alc.co.jp/blog/2000099/6906

そう、この本は大きな反ブランド論なのです。ただ、合理主義の私としては、純粋に”ブランド。ダメ。ゼッタイ。”とは思えず読んでいました。これを逆用しようという想いと、「さすがにやりすぎだろう」という想いの間を振れながら読んでいました。「ブランドって、どういう意味か」という問いはでなかったのですが。ともかく、面白いという点では私も同じ感想でした。
うーん、まとまってませんね。
posted by 山崎 真司 at 20:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ブランド論

2008年02月26日

ルイ・ヴィトンの法則

長沢 伸也編著
東洋経済新聞社 1700円(税別)
初版: 2007年8月

内容:
サブタイトルが”最強のブランド戦略”とありますが、まさにその名の通りの世界最強のブランドであるルイ・ヴィトンについての解説です。世界三大ラグジュアリーブランドが、ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルだと思っているのですが、その中でマーケティング的な部分も含めて頭一つ抜けているのは、何故かというのを解説しています。

ベルナール・アルノー、語るが、LVMHをどのように組織したかという想いを書いた本とすれば、こちらはブランド研究家がルイ・ヴィトンの成功要因を外部から解説した本となります。
ルイ・ヴィトンの成功要因をマーケティングの4P(Product, Price, Place, Promotion)とBrandという5つの章立てとして解説しています。


感想:
ルイ・ヴィトンがなぜ上手くいっているかについて、外部から解説をした本ですが、その解説が本当に成功要因なのかについては若干疑問が残ります。

各々についてはある一定の説得力があるとも思いますが、表面的な解説が多いのと、細かすぎてあまり実際には影響を与えないような解説もあるかな、と感じました。ただし、この本を読むと、ルイ・ヴィトンが何をよく分かります。おかげで、ちょっぴり欲しくなりました:-)
読んでて、素敵だったのは、
ファッションに限らず、ブランドは、「贋物を持つことは恥ずかしい」という心の持ち方を世間の中に構築し、顧客を啓蒙することに腐心している。
メゾン志向のブランドは、コレクションラインの高価なものを買えない消費者のために、手を差し伸べるということはしない。「買えないのなら買わなくてよい。当店の顧客に加わっても恥ずかしくないような身分になってから買いに来なさい」という態度を示すだけだ。
「何で店に品物がないんだ!」「この色じゃなくあの色が欲しいのに!」と、きわめて常識的なことで怒るお客さんに、ルイ・ヴィトンの店員さんが「量産できませんので」といって、懇切丁寧に事情を説明する。〜省略〜この「量産できない」というのは、エクスキューズでもある反面、優れたPRにもなっているし、結果として飢餓感を煽っていることになる。
なるほど、これまでブランド論というとよくあるような一般的なブランドの話ばかりで、ハイ・ブランドのマーケティング戦略というのはあまり読んだことがなかったのですが。これで、ハイ・ブランドがどうしてあのように行動しているかということが分かってきました。


他人の書評を読んで:
http://trife.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_170c.html
基本的には多くは多書などで知っているといった法則でしたが、あらためて読んでみると。

・ミューズの法則
・ド派手パーティーの法則

でしょうか。特にミューズを固定しないというのは、なるほど、と思いました。さすがに100年以上続いているような企業はちょっと違うな、と思ったりしました。

ちなみに
・歴史を重んじる法則
については同じLVMHグループの靴屋であるベルルッティで店員さんと話すと非常に感じます。コトラーが現代マーケティングについてよく述べていることだおと思いますが、まさにストーリーを売っていると感じます。


http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/books/breview/112001/
>その大胆で緻密(ちみつ)なブランド戦略を浮き彫りにしている。

ちょっと言いすぎかな、と感じました。たしかに緻密な戦略と思いますが、本当に本書がその戦略の中心を浮き彫りにしているかというと、疑問かな、と感じました。
 
 
posted by 山崎 真司 at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ブランド論

2008年01月12日

ベルナール・アルノー、語る

聞き手 イヴ・メサロヴィッチ
日経BP社 1600円(税別)
初版: 2003年1月

内容:
ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、セリーヌ、ショーメ、ロエベ、と聞いて何を思い出しますか?ちなみに、これは名古屋のミッドランドの1Fに入っているブランド店のうちLVMH(モエヘネシー ルイ・ヴィトン)グループのものになります。この本は、そのLVMHの社長兼CEOのベルナール・アルノーの対談となります。

ベルナール・アルノーはわずか15年程度であの一大ブランド帝国を創り上げてしまった人ですが、あまり表には出てこず、貴重な一冊となっています。内容は全6章で

第1章 成功の秘訣
第2章 出会い
第3章 LVMHあるいはブランドビジネスの創設
第4章 私生活
第5章 インターネットへの挑戦
第6章 資本主義、ヨーロッパと政治

となっています。


感想:
野次馬的にベルナール・アルノーについて興味あって、読んでみました。もともとは対談ということで内容が薄いかな、と思ってスルーしていたのですが、せっかくだから読んでみました。
基本的にはメサロヴィッチの問いにアルノーが答えるという形式になっていますので、個々のトピックについては深く書かれているわけではないです。その分すぐに読み終わるともいえますが。

またアルノーについてもほとんど知らなかったのですが、どういう経歴か若干わかるようになりました。理工系大学出身で、実業家の家系で、建築系の会社をやってたのに突然ディオール(のあるグループ)を買収して、その後LVMHをはじめ各企業を買収して一大帝国を築き上げました。戦略について基本的にはプロフェッショナル・マネージャーのジェニーンと似たようなものを感じましたが、この本では戦略や企業経営にあまり突っ込んだ本ではありません。
アルノーといえばやはりハイ・ブランドを創った男ですので、そういった観点からいくつか気になった言葉を書いてみます。

トップモデルについて
トップモデルたちは美に関する役割を果たし続けています。忘れてならないのは、製品を売ることは、夢を見させることだということです。女性というものは、等身大の人間よりも崇高な理想像と自分を同一視するものなのです。

映画スターが香水の宣伝に出ることが減ったことについて
スターのキャラクターを貼り付けるだけでは失敗します。第一、その人は香水や宝飾などを宣伝する「サンドイッチウーマン」になるわけです。見かける機会が多いほど、魔法は効力を失い、スターは神秘性を失います。

うーむ、深いような...


他人の書評を読んで:
http://www.actiblog.com/ueyama/24906
フランスが見るアメリカはあまり読み取れませんでしたが、6章からはフランスの閉塞感と、フランスの左派的な部分や政治に対する苛立ちというのはたしかに読み取れました。
そのようなフランスの背景というのがこの本の”読み”として正しいかは分かりませんが...いや、6章の”読み”としては正しいのでしょうね。


http://blog.livedoor.jp/bestbooks/archives/50145473.html
なるほど希少価値の高い本ですか...たしかにアルノーについて客観的に書いてある本やアルノーの主観が書いてある本はほとんど見ません。


 

posted by 山崎 真司 at 08:11| Comment(0) | TrackBack(0) | ブランド論

2007年07月25日

パワーブランドカンパニー

山田 敦朗著
東洋経済社 2000円(税別)
初版: 2003年3月27日

内容:
米国にある多くの企業のブランドマネージャーにヒアリングをして、各社でブランドがどのように扱われているかのインタビューをベースに、山田氏が解説しています。
扱われている企業はフェデックス、キャタピラー、GM、スターウッド、シティ・グループ、モルガン・スタンレー、IBM、ヒューレット・パッカード、サン・マイクロシステムズ、パーム、ニューヨーク・タイムズスクエア(←これだけ企業ではありませんが)といったところです。


読んだ感想:
知人に進められて山田氏の本を何冊か読んでいますが、この本は正直いまいちです。内容はブランドの専門家から見た各企業の紹介といったところでしょうか。取り上げられている所は、ブランド関係の本でもそうでない本でも取り上げられることが多い企業なのであまり新鮮味もなく、新しい視点もあんまりないというのが正直な感想です...

ただ、ニューヨーク・タイムズスクエアの事例については私は読んだことがなかったので、とても新鮮でした。よく雑誌などで地方の商店街活性化についての記事などが載ってますが、この本の記事はそういう点で参考になると思いました。
posted by 山崎 真司 at 15:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ブランド論

2007年07月22日

キャラ立ちの技術

杉村 貴代著
ダイモンド社 1200円(税別)
初版: 2006年9月22日

内容:
章立ては以下のようになってます。
1.「キャラ立ち」って何?
2.キャラのつくり方
3.演出はキャラ立ちのカギ
4.評判はキャラを強める
5.キャラをフレッシュに保つ

・印象を残すことが大事、そうしないと忘れられてしまう。
・そのためには、分かりやすい明確なポジションを作ることが大事で、そのためには右脳的・左脳的の両面からキャラを考える。
・欠点もキャラの特徴のひとつ。
といったことを述べてますです。

 

読んだ感想:
ブランドって何?というのを個人ブランドに限って、ポップな書体で簡単なことだけ書いた本といったところでしょうか。それ以上でも以下でもない、というのが正直な感想です。

書いてる人も、横文字のコンサル会社の女性取締役ということで、今流行り系の社長本でしょうか。全くブランド論とか知らない人ならば読んでもいいかもしれませんが...正直、これ一冊読んでもなー、といった感じでした。残念。
 
posted by 山崎 真司 at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ブランド論