長沢 伸也編著
東洋経済新聞社 1700円(税別)
初版: 2007年8月
内容:
サブタイトルが”最強のブランド戦略”とありますが、まさにその名の通りの世界最強のブランドであるルイ・ヴィトンについての解説です。世界三大ラグジュアリーブランドが、ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルだと思っているのですが、その中でマーケティング的な部分も含めて頭一つ抜けているのは、何故かというのを解説しています。
ベルナール・アルノー、語るが、LVMHをどのように組織したかという想いを書いた本とすれば、こちらはブランド研究家がルイ・ヴィトンの成功要因を外部から解説した本となります。
ルイ・ヴィトンの成功要因をマーケティングの4P(Product, Price, Place, Promotion)とBrandという5つの章立てとして解説しています。
感想:
ルイ・ヴィトンがなぜ上手くいっているかについて、外部から解説をした本ですが、その解説が本当に成功要因なのかについては若干疑問が残ります。
各々についてはある一定の説得力があるとも思いますが、表面的な解説が多いのと、細かすぎてあまり実際には影響を与えないような解説もあるかな、と感じました。ただし、この本を読むと、ルイ・ヴィトンが何をよく分かります。おかげで、ちょっぴり欲しくなりました:-)
読んでて、素敵だったのは、
ファッションに限らず、ブランドは、「贋物を持つことは恥ずかしい」という心の持ち方を世間の中に構築し、顧客を啓蒙することに腐心している。メゾン志向のブランドは、コレクションラインの高価なものを買えない消費者のために、手を差し伸べるということはしない。「買えないのなら買わなくてよい。当店の顧客に加わっても恥ずかしくないような身分になってから買いに来なさい」という態度を示すだけだ。「何で店に品物がないんだ!」「この色じゃなくあの色が欲しいのに!」と、きわめて常識的なことで怒るお客さんに、ルイ・ヴィトンの店員さんが「量産できませんので」といって、懇切丁寧に事情を説明する。〜省略〜この「量産できない」というのは、エクスキューズでもある反面、優れたPRにもなっているし、結果として飢餓感を煽っていることになる。なるほど、これまでブランド論というとよくあるような一般的なブランドの話ばかりで、ハイ・ブランドのマーケティング戦略というのはあまり読んだことがなかったのですが。これで、ハイ・ブランドがどうしてあのように行動しているかということが分かってきました。
他人の書評を読んで:
http://trife.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_170c.html
基本的には多くは多書などで知っているといった法則でしたが、あらためて読んでみると。
・ミューズの法則
・ド派手パーティーの法則
でしょうか。特にミューズを固定しないというのは、なるほど、と思いました。さすがに100年以上続いているような企業はちょっと違うな、と思ったりしました。
ちなみに
・歴史を重んじる法則
については同じLVMHグループの靴屋であるベルルッティで店員さんと話すと非常に感じます。コトラーが現代マーケティングについてよく述べていることだおと思いますが、まさにストーリーを売っていると感じます。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/books/breview/112001/
>その大胆で緻密(ちみつ)なブランド戦略を浮き彫りにしている。
ちょっと言いすぎかな、と感じました。たしかに緻密な戦略と思いますが、本当に本書がその戦略の中心を浮き彫りにしているかというと、疑問かな、と感じました。
posted by 山崎 真司 at 22:10|
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