マルコム・グラッドウェル著
SB文庫 780円(税別)
初版:2007年6月
内容:
サブタイトルは”ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則”となっています。原題は”The Tipping Point”(ティッピングポイント)となっています。このティッピングポイントというのはある地点を過ぎると急速に広がるという爆発的感染が始まる点のことです。例えば、あるメーカーの鞄があったとして、最初はごく一部の人しか知らない(持っていない)のですが、ある時点から急速にみんな知って持ち始めるといった点のことです。このティッピングポイントについての話題を中心として、雑誌のライターであるグラッドウェルが書いています。
このティッピングポイントについての3原則として
1.少数者の法則 (ごく一部の人が周りを”感染”させる)
2.粘りの要素 (繰り返しによって認知させる)
3.背景の力 (人の性格などでなく、状況などが影響を与える)
といったことを述べてます。
感想:
少数者の法則の中で述べている、コネクターという概念がよかったです。
生まれつき多くの人と繋がるタイプの人がいて、こういう人が情報を急速に伝達するということを述べています。そういえば、知人の中でもいろんなコミュニティに所属していて、休日はびっしりいろんな知人と会う予定を入れていて、ランチもいろんな人と食べるというタイプの人がいました。
こういう人に「**というイベントをしたいけど、協力してくれそうな人を紹介して、もしくは紹介してくれそうな人を紹介して」といったことを頼むと、それっぽい人を紹介してもらえる、と。
会社の中ではこういう人がいることを認識してますが、個人的に巨大なネットワークを作ってる人がいるということは忘れてました。
粘りの法則は、ティッピングポイントの話というより感応度分析(感性工学?)の話です。セサミストリートが細かい分析とフィードバックを伴って作られたという話です。感応度分析の話自体は何度か読んだことがあったので、あまり面白くありませんでした、うーん。
背景の力では、有名な窓割れの理論が述べられてます。これも何度も読んだニューヨークの改革の話の触りが述べられており、また「商品はどのようにして感染するのか?」という魅惑的なタイトルでは、ジェフリー・ムーアのキャズム理論の触りが述べられているだけでかなり期待はずれでした。
と、こんな感じで、ティッピングポイントを中心に述べていますが、若干ズレている周辺分野の記述(しかも有名な話が多い)ところもあり、思ったほどでもありませんでした。まぁ、全体を俯瞰するにはいいのですが、やはりティッピングポイントという話題からの関連の薄さを感じてしまう話が多かったかな、というのが正直な感想です。
他人の書評を読んで:
http://zarathustra.blog55.fc2.com/blog-entry-216.html
本書の締めくくりの言葉である。「正しい場所を押してやれば、傾く」というメッセージは非常に重みがある。「ティッピング・ポイント」というのは、希望を与えうる言葉であるわけだ。
じゃあ、どこを押すのか?という疑問がどうにも出てしまうのです。もちろん、この本の説明でいうコネクターや情報通のメイブンといった人を上手く使ってとなるのでしょうが...もっとも、こういう構造があるということを知らなければ、その正しい場所探しがもっと難しくなる、ということなんでしょうが...
http://right-left.tea-nifty.com/blog/2007/07/post_5892.html
同じ情報を持っていて他の人に影響を与える人と与えない人の違い、人の感情に影響を与える背景・方法などが面白い。商売だけでなく教育にも深く関係する技術です。
私の読みは、趣味や仕事の上ということをイメージしながら読んだのですが、教育という点では非常に有用かもしれません。実際に子供においては、まさにこの本のようなネットワークになっているでしょうし。教育という視点は全くありませんでした、さすがです。
http://d.hatena.ne.jp/mixa59/20071204
こちらの方の読書メモ帳がとてもキレイにまとまっていて良かったです。ほんとに読みやすい。
「水を飲むような読書」を目指していましたが、この本は、売り飛ばしたりせず保管書籍の仲間入りです。 私との読書傾向の違いなのかもしれませんが、こういう部分が感じ取れませんでした。たしかに具体的なことが書いてあるし、ある範囲での相関は感じたのですが...ううむ...もう一度読まないと....ううん、どうしよう?
posted by 山崎 真司 at 00:26|
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