2012年10月29日

なぜビジネス書は間違うのか




ハロー効果という言葉があります。このハローというのは「こんにちは」じゃなくて、「後光」という意味です。何かの影響で他もよく見える(もしくは悪く見える)というものです。人気のある有名人がCMに出てくると、その商品の好感度も一緒に上がってしまうというものや、サッカーのトップレベルの選手はサッカー技術だけでなく、人格的にもトップレベルだと思い込んでしまったりというものです。

この本はサブタイトルが「ハロー効果という妄想」とありますが、まさにこのハロー効果が企業を分析したり、そこから何かを学ぼうとする時の罠になるということを述べています。

例えば、業績がいい会社は、「就職したいランキング」で上位に入るし、株価がいいというのは当たり前ですが、それだけでなく「社会に貢献してる会社」ランキングでも、「働きやすい会社」ランキングでも上位に来ます。まるで、ベストジーニスト賞が、ジーンズが似合うかどうかでなくて、その時活躍してた芸能人に与えられるのと同様です。

これまでの活躍する芸能人を調査して、そこから芸能人として活躍する条件を調査する時に。活躍した芸能人はベストジーニスト賞を取っているから、「ジーパンが似合うようになることが芸能人として活躍する条件だ」というのは間違っていることは明らかでしょう。


また、企業の単体の業績を考える場合には、後付で様々なことをいうことができます。例えば中心となる事業と新しい事業のバランスについては、

中心事業をメインとして上手くいった場合: 「本来の会社の軸がブレず、集中した」
中心事業をメインとして上手くイカなかった場合: 「古い価値観にとらわれて、新しいことにチャレンジできなかった」
新しい事業にチャレンジして上手くいった場合: 「常に時代をリードするような新しい事業を創出した」
新しい事業にチャレンジして上手くいかなかった場合: 「本業を忘れて、会社のあるべき姿から離れてしまった」

と適当なことをいうことができます。さらに、「顧客志向」という言葉を添えておけば、どの場合も、成功と失敗をそれっぽく語ることができます。

つまり、ビジネス書では、批評サイドから見ると「顧客を見る」「顧客視点」というのは、強力なキーワードということですね。後から見た業績のみで、「顧客」を切り口にいうことができます(売上が上がっている=顧客を理解しているから当たり前ですね)

また、この本では、「戦略」と「実行」についても分析をしています。『「戦略」は正しかったが、「実行」ができていなかった』というのは、CEOを更迭する場合の良い言い方になります。「戦略」と違って「実行」ができていなかったというのは、抜本的な改革も必要とされません。何しろ「実行」はあやふやですから。


ビジネスにおいては、外部環境や運の要因が大きいのは明らかですし、ブックオフの100円コーナーに行けば、死屍累々のIT企業やその他の企業の成功法則にあふれています。トム・ピーターズの「エクセレント・カンパニー」やジム・コリンズの「ビジョナリー・カンパニー」で取り上げられた企業がその後にも同様にエクセレントでもビジョナリーでもないというのは有名です(そして、ほぼ同様にすべての企業とビジネス書が間違っている)

一方で、私たちはそれらの本を楽しく読むことができます。これはストーリーの罠と言えるかもしれません。「ストーリーを消費者に食わせる」ことで相手の思考を麻痺させるというのは頻繁に行われていますが、まさに私たちは「第5水準のリーダーシップ」や「リーンスタートアップ」という成功のストーリーを欲しているだけなのかもしれません。


ちなみに、この本で語っていた世界観は自分の感覚に近かったのです。「エクセレント・カンパニー」や「ビジョナリー・カンパニー」に対する批判は今更という感じです。しかし、このようなハロー効果はたしかに厳然とあり、ビジネス書を読むのはストーリーを味わうというやはり趣味にすぎない想いをさらに強くしました。結局、狼男を撃つ銀の弾丸などは存在しないということですよね。

posted by 山崎 真司 at 14:09| Comment(0) | TrackBack(0) | その他、ビジネス書
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