2012年04月19日
歴史を変えた気候大変動
邦題は何やら地球温暖化を暗示するようなタイトルですが、原題はThe little Ice Age(小氷河期)です。
この本は過去1000年のヨーロッパの気候と歴史についての本です。なぜヨーロッパかって?それはデータが多いからです。20年以上前ですが日本についても江戸時代以降くらいでは同様の内容の本を読んだ記憶がありますが、こちらの本はヨーロッパ全般の本なのでよりダイナミックです。
この本を読むと、当然のことながらヨーロッパは気候変動によって大きな影響を受けたことが分かります。グリーンランドへのノルウェー人の移住とその消失については聞いたことがありますが、この本ではその移住が鮮やかに描かれています。このエピソードが1章にあるため、一気に引きこまれました。この手の本はどちらかというと淡々となりがちなのですが、この”歴史を変えた気候大変動”では気候と民衆の生活史といった感じでかなり具体的に描かれています。
歴史は、水温の影響を受けるタラを追いかけたり、ジャガイモを食べようとするかどうかにかかっていたのです。穀物は寒さによっても、干ばつによっても収穫量は激減します。そして疲弊して体力が落ちた民衆は、ペストなどの伝染病に弱くなります。当然、伝染病や飢饉は戦争や政治体制に影響を与えます。
著者は慎重に「歴史は気候によって起こった」と言うことを避けていますが、この本を読むと気候が歴史に対して与えた大きな影響を知ることができます。”歴史の補助線”という言葉がよく似合う本だと思います。
ちなみに友人が発見したのですが、本書の表紙の絵はブリューゲルの「雪中の狩人」とありますが、実際には「戸籍調査」という絵で間違った絵が乗っているようです。原著も同様の間違いがあるようですが。
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