2010年12月29日

環境危機をあおってはいけない

ビョルン・ロンボルグ著
文藝春秋 4500円(税別)
初版: 2003年6月(原著は2001年)

というわけで,2010年の第6位は,これ





「ワーク・モティベーション」です.有名な産業心理学者のゲイリー・レイサムの著書で,これまでの様々な理論を歴史と共に説明しています.以前の感想はこちら.


そして,第5位は,これ






どこかで選ぶ50冊の1位になったとかで,流行りましたね.梅棹忠夫の”文明の生態史観 (中公文庫)”と重なるところもありますが,ジャレド・ダイアモンドはより,詳細な視点から自分の理論を説明しています.以前の感想はこちら.


そして第4位は,これ





内容はタイトルの通りです.環境危機本としては,アル・ゴアの「不都合な真実」という本があります.これはさすがにやりすぎな本ですが.


この本を読む前にクライブ・ボンディングの「緑の世界史〈上〉 (朝日選書)」,「緑の世界史〈下〉 (朝日選書)」を読んで少し暗い気持ちになったのですが,冷静に考えることができました.

この本のポイントは,どこかの大学教授のように「環境問題は存在しない!!」などとデータもないのに(もしくは全て自分調べで)適当なことを言うことでありません.

一方,環境危機問題には,様々な利権があるのでそれぞれが自分の権益に従って声高に環境危機・環境保護を謳っています.また,”専門家”にもそれぞれ自分が注目される・研究費を取得するなどのインセンティブに従って環境危機・環境保護を謳います.


これに対してデータをベースに「どこに環境問題があり,どこには環境問題がない」を語っているのがこの本です.

実際に,環境問題については”あらゆる問題をすぐに解決する”が目標ではなく,問題に対して優先順位をつけ,それぞれのテクノロジーの進化も考慮しながら,”実施する”ことだと思います.

例えば,「化学製品が増えてきたのでガンが増えた」というのは,「他の原因で人が死ににくなったのでガンで死ぬ人が増えた」という事実があるだけの問題で,「化学製品が増えた」のと「ガンが増えた」ことの間には明確な因果関係が示されません.「大気汚染が進んでいる」というのも,先進国では様々な規制が進んでおり,大気汚染は減っていますし.そもそも,産業革命当時のロンドンを考えれば大気汚染が減っていることは明確です.

「生態系に悪影響があるので農薬を使用してはいけない」ということに対しても,それでは「農薬がなければどれだけの農作物が作れるのか?」ということを考えないといけません.結局,農薬を規制することによって,今の世界の人口を賄いきれないならば,一部の裕福な人間のみが”食える”ということになりかねません.一見,善意の各種規制も”農薬による土壌への影響”という直接的な影響のみしか考慮しないと,間違った結果を及ぼします.


これらのことは一例ですが,環境危機として言われていることの多くについて,データを軸にきちんと説明しており,読者は自分で考えることを促されます.約600ページ,2段組の大著ではありますが,論理がしっかりしているので非常に読みやすい一冊です.もちろん,そのまま鵜呑みにする必要はありませんが,一方で”環境保護”派の主張についてもインセンティブを考慮しながら割り引いて,もしくは疑わなければならないことがわかるでしょう.



posted by 山崎 真司 at 09:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会一般
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/42295746
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック