2009年08月30日

詐欺師入門

デヴィッド・W・モラー著
光文社 1800円(税別)
初版: 1999年9月

 

 
 
原題は"The Big Con"です。ビッグ・コンというのは大掛かりな仕掛けで大金を狙う詐欺のことです。原著は1940年の本で、”スティング”のネタ本とあります。
ビッグ・コンというのは”おとり”が捕まえた”カモ”を、特定の場所(架空の賭場や取引所など)に連れて行き、そこで複数人での大がかりな仕掛けで詐欺を働きます。


この本をビジネス書として読むならば、2点の違和感について言及しなければならないです。


まず、一点目としては、ビジネスの進化についてです。

この本を読んでいくと、ショート・コン(ちょっとした詐欺)からビッグ・コンへ、そしてビッグ・コン内での詐欺の進化・巧妙化といったものを読むことができます。これは一見すると、ビジネスの直線的進化として読み取れてしまい、この理想的なビジネス進化観には実際とのギャップを感じます。
ただし、これは著者が言語学者であり、この本もビッグ・コンの歴史を後ろから見たものであるということを考えると(聞き出した相手が詐欺師だとすると失敗をいちいち説明していないと思われる)、このような書かれ方をするのも仕方ないと思います。


もう一点は、すべてをコントロールできるという万能観です。

ビッグ・コンは一店舗を一時的に作成し、また一回の詐欺に一ヶ月以上かけることもあるような大掛かりなものです。帯にあるように”ただ一人の観客のために上演される現実と見紛うほど綿密な演劇”なのです。
しかし、実際にこのような大掛かりなことをしようとすると、非常に何度も調整が必要となります。この本からは、このような調整はなくそもそもの予定通りにいったかのように書かれています。リアルなビジネスを念頭に置くと、このような調整の記述の不在に違和感を感じます。
 


このような詐欺は現在は行われいない(はず)ですが、このような詐欺のポイントは「詐欺自体は不正行為を行うと持ちかけていること」です。

ビッグ・コンでは、競馬やボクシングの八百長や株の仕手などを題材に大儲けできるといってその種銭を用意させる、というのが基本的な形です。
つまり詐欺にひっかかるのは非合法だけど確実に儲かるというエサに食いつくことが必要なのです。なにやら、福本伸行の漫画っぽいですが...
 


逆にこれがビッグ・コンにひっかからないポイントなのです。

posted by 山崎 真司 at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会一般
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