ドナルド・ノーマン著
新曜社 2900円(税別)
初版: 2004/10
ノーマンというと”誰のためのデザイン?”のように製品のデザインを機能から語った本が多く、ユニバーサルデザインといった視点から読まれますが。この本はこれまでの著書から一転して、製品の情緒的側面について語ったものです。
この背景には、認知というものは感情と互いに強い影響を受けていることが分かってきていることがあるでしょう。
本書の主張ではモノを本能レベル、行動レベル、内省レベルと分けて考えます。
本能レベルを美的センス、行動レベルを機能性や使いやすさ、内省レベルをモノのもたらす満足感とみなすと適切でしょうか。
パッと見てよく、使いやすく、満足感がある、というモノはいろいろありますが、この中で難しいものはやはり内省レベルでしょう。
考えてみると、内省レベルまで達するには、卓越した本能レベル、卓越した機能レベル、もしくは作者やメーカーのブランドストーリーといったものが必要です。
読んでいて改めて思ったのは、機能レベルの設計が出来ていないモノの多さでしょうか。自分がIT業界にいるせいか特にソフトは酷くて、一度も使ったことないのではないかといったデザインが非常に多いです。
残念ながら、この本ではどのように本能レベル、行動レベル、内省レベルを満たすデザインを行うかということが具体的に書かれてはいませんが、本能レベルや行動レベルのデザインについては(あるレベルの)デザイナーと試行錯誤で手にいれることができると思います。
後半では感情というものがロボットに必要ということが書いてありますが、これは深いレベルまでの探索(思考)を行わないような特権モード(右脳的思考に相当?)や割り込みモード(集中力の散漫さ)を持っていないといけないといったことと解釈しました。ただし、この本にとってロボットの話は蛇足だと思いました。