2009年07月31日

イノベーションの新時代

C.K.プラハラード、M.S.クリシュナン著
日本経済新聞出版社 2000円(税別)
初版: 2009年6月

 


著者の一人のプラハラードは”コアコンピタンス経営”の共著者です。”コアコンピタンス経営”は経営戦略の本として最もお気に入りなので、期待して読んでみました。

 

 
ビジネスのルールは常に変わっていますが、現在の流れを「顧客経験の共創」と「グローバル資源の利用」という2つの柱からなると分析した上で、これからの企業戦略を論じています。

「顧客経験の共創」というのは、AmazonのオススメやNIKE iDでのカスタマイズしたスニーカー販売といったマスカスタマイゼーションです。
実際にはカスタマイゼーションやパーソナライズといった視点よりも、そのようなカスタマイズやパーソナライズを可能とする業務システムといった視点です。

また、「グローバル資源の利用」については、各種カスタマーサービスの海外を含めたアウトソーシングや、ZARAやDellなどのような海外工場や海外サプライヤーの有機的な使用を指します。
この2つは”クォリティ”と”コスト”と見るとしっくり来るかと思います。


この2つからなる価値を顧客に提供して利益を生むのですが、著者は実際に利益を生むのは”業務”であるとしており、”共創”や”グローバル化”に対応できる柔軟な業務をICT(情報通信技術)で構築することが、これからの企業に必要であるとしています。


たしかにXMLといった明確なインタフェイスがあるので、著者が言うように(SAPやOASのような)パッケージソフトでなく作りこみを行っても情報インフラはできるという印象はあります。

そしてこのような柔軟な情報インフラをベースにして業務を組み立てる(組み立てなおす)ことができるならば、競争優位を築くことができるというのがこの本の主張になります。


普通、業務フローというのは戦略から落としていくものという印象ですが、柔軟な価値提供を行うことができる業務が競争優位の軸になるというのは確からしいと思いました。

posted by 山崎 真司 at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦略論
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