たまには雑誌について書いてみます。この雑誌はタイトルの通り”言語”の専門誌です。
今回は特集が”手話学の現在”ということで買ってみました。手話というのは、普通の言語(?)と違って、指示するもの(たとえば”りんご”という言葉)と指示されるもの(りんごそのもの)の関係性が強いという特徴があり、非常に特殊な言語です。
一方、通常の言語(たとえば日本語や英語)では、”りんご”と”りんごそのもの”や”apple”と”りんごそのもの”にはなんら相関がありません。
つまり、手話というのはひとつの言語としてみると、まったく特殊なものとしてみなければならないことになります。
まず一番意外だったのが、手話使用者の少なさでしょうか。国内では聴覚障害者が厚生労働省の統計で約30万人ですが、手話人口は推定で35,000人〜54,000人程度です。印象としては非常に少ないと感じました。障害者数との比率でも12〜18%程度と、それほど手話が使われていないことが分かります。
また、手話については”手型”、”位置”、”動き”の変化と”表情”で単語をあらわします。これは手話の音韻論というものになります。
手話以外では、インドの最古の文法書についての記事が興味深かったです。
”パーニニのサンスクリット文典と古典期の諸文献”という記事では、パーニニというBC380頃にインドで活躍した文法学者が4000弱からなる「アシュターデャーイー」という文法規定を策定したという話が載っています。
文を命令文や疑問文に分けたギリシアのソフィストゴルギアスよりも、わずか50〜100年後に時制や文や語幹などを体系的にまとめた学者がいたというのが驚きです。実際に「アシュターデャーイー」が引用されているわけではないので、どの程度のものか分かりませんが、文法規定が4000というのはかなりのボリュームであることは分かります。
この記事ではこのような文法規定があった文化的背景が、コンピュータ産業におけるインド出身者の活躍の基盤であると指摘されているとも書いています。その真偽はともかくとして、約2400年前に細かい文法書が出ていたというのは驚きです。