石原莞爾著
中公文庫 552円(税別)
初版: 1993年7月初版(もともとは1940年9月)
歴史を知るためには、後付の解釈だけでなく、当時の思想や時代背景を知るべきだと思います。
その点で本書は、石原莞爾という当時を代表する戦争思想家が、1940年に行った講演と、1941年の講演での質疑応答をまとめたもので、当時の思想を知るヒントになります。
内容としては大きく2つになります。
1つめは、非常に大きな最終戦争が起こるという思想
2つめは、”戦争の進化”という思想
非常に大きな最終戦争というのは、アメリカ、ヨーロッパ、ソ連、(日本を代表とする)東アジアが最後の世界の支配権を争って戦うといった思想で、アメリカ対日本という可能性が高いと論じています。
これを”東洋の王道と西洋の覇道の戦い”で、”いずれが世界統一の指導原理たるべきかが決定するのであります”と表現しています。
この背景には、”戦争の進化”という弁証法的歴史観とでも言うような、(世界精神とでもいうものがあるせいか)「歴史の流れはこうだったから、今度こうなる」といった思想があります。
P.66の付表に”戦争進化景況一覧表”という表があります。
時代が”古代”→”中世”→”近代”→”現代”→”将来”といくにしたがって、戦争の間隔が短くなっていき、戦闘の指揮体系が小さくなっていき、そして、戦争の性質が”決戦戦争”と”持久戦争”を繰り返しているという主張をしています。
これは石原氏の哲学的思想が、日蓮宗の影響と結びついた結果といえます。
石原氏の思想が悪い思想だった・良い思想だったといったことでなく、1940年に何を考えられていたのか、ということを知ることができます。
あれ? 太平洋戦争を語るとき以外には読まなくていい気がしてきました...
著作こそ読んだことは無いのですが、
中学生のときに存在と最終戦総論を初めて知って、
「こんなことを本気で考えている軍人が居たのか!?」
とびっくりした覚えがあります。
戦後、米軍関係者に日本の戦争責任を日清戦争まで遡ると言われたとき、
開国を迫り260年続いた太平を破ったペリー提督こそ戦犯、彼を呼べ
と答えたのだそうで。
ちなみにこの本で知りました。
・『雑学 太平洋戦争の真実』
著:佐治 芳彦
日東書院本社(1992/04)
http://www.amazon.co.jp/%E9%9B%91%E5%AD%A6-%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%AE%E7%9C%9F%E5%AE%9F%E2%80%95%E7%9C%9F%E7%8F%A0%E6%B9%BE%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%AD%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E7%A1%AB%E9%BB%84%E5%B3%B6%E2%80%A6-%E4%BD%90%E6%B2%BB-%E8%8A%B3%E5%BD%A6/dp/4528000385
宗教くさい(?)部分もありますが、時代背景を考えれば仕方ないし..
そしてやはり、見識を感じさせられる本でしたー。