2009年06月21日

ブラックスワン (上) 不確実性とリスクの本質


ナシーム・タレブ著
ダイアモンド社 1800円(税別)
初版: 2009年6月


黒い白鳥(swan)はいない

という命題を解決するためには、いくら白い白鳥を集めても、また黒いカラスを集めても駄目です。
(黒いカラスは、黒いものは白鳥ではない、が対偶なので)


この問題は帰納の問題として知られていて、ヒュームの問題として広く認識されているのでしょうか?


この帰納の問題のポイントは、自然の斉一性(昨日も今日も太陽は東から昇ったから、明日も東から登るだろう、と思うこと)を軸に認識している帰納の問題と、斉一性が期待できなのに行ってしまう帰納の問題(ここ5年間住宅価格は上昇しているからまだ上がるだろう、とか、うちの主力商品は過去3年間で売り上げが伸びてきたので、来年度も悪くとも売り上げは横ばいだ、とか)を混同していることでしょうか。


このブラックスワンでは帰納の問題を最初に言っていますが。

実際はプラトン性とこの本で名づけている「人間は、現象を純粋で分かりやすい型に押し込めて解釈してしまうこと」の弊害についてが主なテーマでしょうか。

プラトンの師匠だったソクラテスは”無知の知”として知られているのですが、プラトンのせいなのでしょうか。
いや、実際は人間は頭を使わなくて直感を使ってしまう傾向があるということが背景にあると思います。
最近の研究ではダニエル・カーネマンの心理経済学として知られている分野が有名ですし、問題提議としてはフランシス・ベーコンの”種族のイドラ”でしょうか。


ソクラテスは”弁明”において、死ぬことが悪いことかどうかなんて分からない、と言ったそうですが、
現代社会では「分からない」と言ってはいけないことになっている気がします。

この「分からない」を拒否すると、嘘と知りつつ「正規分布を仮定して」予測値を作ったり、
今度はそれが一人歩きして(そして分かってない人が仮定を省略して)ちょっとしたバブルが「100年の一度」に化けたりしていくことになります(ベトナム戦争より、2つの世界大戦より危機なのか、キューバ危機の方が世界の危機に近かったのでは?)


プラトンでなくソクラテス的な私は何も知らないという立場と
帰納についてのポパー的解釈がこの本の本質なんでしょうか。

 
ちなみに、これらがオススメ

 
posted by 山崎 真司 at 16:37| Comment(4) | TrackBack(0) | その他、ビジネス書
この記事へのコメント
うーん、金融関係の人間からすると、
“耳が痛い話”ですな〜(笑)

顧客に合わせて、(売り手にとって)都合の良い情報を流して、商売をしている方は、結構多いです・・・<(_ _)>

まあ、それに安住している顧客側にも責任はゼロとは言いませんが・・・。

金融理論とか言われている大多数は、過去の経験に基づくものなんですよね。(つまりは、後付けの理論が多いわけですな)
ざーさんが書かれている、正規分布に基づく標準偏差(2シグマの値をよく採用します)なんかが最たる例です。
そうすると、計算上のリスクは上下2,5%。
つまり、それ以外のリスクは5%以内に収まるというのが、投資に対するリスクの認識だと考えられています。

昨今の金融危機で随分と認識が改められたらしいですが・・・(●^o^●)

とはいいつつも、何も指標がないのも考えもの・・・。
永遠の命題にも近いですね(●^o^●)

あとは、自己啓発系の“○○の法則”ってのも、
まさしく当てはまりますね。

ぜひとも、この本は読んでみたいですね。
良質なアウトプット、有難うございます<(_ _)>
Posted by 塩田智史(シオ爺) at 2009年06月21日 20:19
ぼくも2シグマよく使いますよー。
分かりやすいから。

もちろん、未来の予測で正規分布かどうかぜんぜんわかんないとこなんですけどねー。複雑なシステムだと分かってても、他に適切なモデルがないんですよねー。

ちなみに金融はよくわかりません。うちの両親の投資について「これは駄目でしょ」(投信の手数料見たか?ジャンク債みたいなのは、リスクとリターンがあってないので止めろ)というのですが、「じゃあ何なら儲かるの?」という問いに「わかりません」と答えると怒られます^^;;

たぶん問いが悪いと思うのですが...
Posted by 山崎真司 at 2009年06月22日 07:19
>「じゃあ何なら儲かるの?」という問いに「わかりません」と答えると怒られます^^;;

それを明確に答えて、なおかつ結果をだしている人は、少なくとも僕の知る限りいないです(^_-)-☆

著名な投資家と言われる方でも、
長期分散投資(資産、通貨、時間)を前提としたうえで、ドルコスト平均法(アセットアクセル)を用いて、なおかつ経済の大きな流れ(経済指標等)を勘案しながらリバランスを行う。

例えば債券:株式 を50:50のバランスを保つ。

が投資の王道ですが、僕の知る限りはそれが一番手堅いと考えています。

個人の資産を運用して、老後の資金を確保するレベルであれば、それで十分です。
(短期的に大きな利益を上げようとすると、もっと複雑な手法がひ必要ですけれど・・・(●^o^●))

なにか良い方法があれば、ご教授お願いします!
Posted by 塩田智史(シオ爺) at 2009年06月22日 22:02
>なにか良い方法があれば、ご教授お願いします!

なにをいってるんですか!!!

ぜひいろいろ教えてください!!!!

お金や経済はチンプンカンプンですよ〜 >_<)

お金のない国にいきたい...あ?そういう意味じゃなくって。
Posted by 山崎真司 at 2009年06月25日 07:19
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