2008年11月24日

確定性の世界

カール・ポパー著
信山文庫 680円(税別)
初版: 1998年3月(単行本は1995年、原著は1990年)

 
ポパーの2つの講演「因果性についての二つの新見解」と「知識の進化論に向けて」とアーンスト・ゴンブリックの講演「ポパーと私」が掲載されています。ポパーの2つの講演はそれぞれページ数はあまり多くなく、また一般向けの講演なので比較的読みやすいのでポパー入門にはいい本と思いました。もちろん、実際に読むには理解するために根性が必要かもしれませんが(ただし、それが心地よい?)。
ポパーについては科学哲学者といわれ、反証可能性や世界1・2・3といった分類を行っています。


「因果性についての二つの新見解」ではハイゼンベルグの不確定性原理の因果関係観から、確定性(propensity)の場という概念を提案しています。これは、A→Bというニュートン力学的な確定的な因果関係観から、AからBの間に様々な確率的な状態を経てBが成立するという因果関係観を示しています。ハイゼンベルグの不確定性原理が「世界が決定論的でない」ことを表わしているかどうかは分かりませんが、因果関係*観*としては、このような確率の場を考えるというのは有効だと思います。


「知識の進化論に向けて」では、「知識というのは帰納によって学習されるものではない」という主張が述べられています。これは、たくさんの事象があってそれで物事の背景を学習する、というのでなく、実際にはある事象があった時に、「(暗黙的にしろ)ある仮説を持っていてその仮説の否定→新しい仮説の提案という繰り返し」によって学習をするという知識観になります。

例えば、「花が太陽の方向を向くと有利」という仮説を持った植物と、「花が太陽の方向を向かないと有利」という仮説を持った植物の2つの植物がそれぞれあった場合に、いくつかの世代を経て、結果として「花が太陽の方向を向かないと有利」仮説は棄却され、「花が太陽の方向を向くと有利」仮説が残ります。これがひまわりの進化の背景という知識観となります。


この本は2つの講演ということで、「因果関係とは何か」、「知識とは何か」といったことの考察になっていますが、何気なく考えていることの様々なベースにまえ踏む込んで深く考察するということはあまりないと思います。その点でも非常に刺激的な一冊でした。


 

posted by 山崎 真司 at 09:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 哲学、人生論
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