2008年07月13日

競争戦略論I

マイケル・E・ポーター著
ダイアモンド社 2400円(税別)
初版: 1999年6月


「戦略は戦術勝る」といったことを言います。実際には戦略といっても相手が存在する上で、実際に”競争優位”をもたらす有効な戦略といったものはどのようなものでしょうか?

こちらの戦略に対して、相手も同様なことをできるのではないでしょうか?例えば、「技術重視」や「ブランド重視」、また「製品の開発サイクルを短くして、タイムリーな商品提供を行う」といった戦略はどこでも見られるもので、戦略といったレベルではないでしょう。


企業戦略の第一人者であるポーター氏は「競争優位の戦略」でこのような”競争優位”をもたらすものについて分析しています。ただ、「競争優位の戦略」で述べられている戦略は実際に適用可能な戦略といったものは少ないかもしれません。これは相手に真似がされない(=持続的な競争優位をもたらす)という時点で、例えば「立地」や「歴史」といったものに依存するしかないといったところでしょうか。


 

キーポイントとなる概念としては、「戦略とはトレードオフ」であり、「競合他社が取れないポジションを取るといった戦略」を取るといったことです。
「戦略とはトレードオフ」というのは直感的にも分かるように、戦略は一つでないということでしょうか。もし何らかの分析によって判断無しにひとつの戦略に行きつくならば戦略といったものは存在しないということでしょう。実際には短期と長期、売り上げと利益に代表されるように(実際には商品開発や出店のような様々なレベルでの)トレードオフについて判断しないと戦略が決められないということでしょう。


また、”競合他社が取れないポジション”というのは、例えば”商品ラインアップを絞る”といった戦略があります。短期的には売り上げと利益が落ちますが、一方で商品ブランドを高める効果があります。このような戦略は、任期が3〜5年の雇われ社長では取ることが難しい戦略と言えるかもしれません。

実際には”競合他社が取れないポジション”として、”商品ラインアップを絞って、ブランド価値を高める”というのが戦略というよりも、”他社とは違うポジションを常に取ろうとする”ということ自体が”競争優位”をもたらす戦略であるといったことを述べています。


以前”競争優位の戦略”を読んだ時ほどの衝撃はないのですが、さすがに企業戦略の第一人者といったところでしょうか。キッチリ”読ませる”本に仕上がっていました。

 


他人の書評を読んで:

http://www.geocities.jp/nymuse1984/oncompetition.html

本書はそんなポーターの論文(ハーバード・ビジネス・レビューに掲載されたもの+α)を5本収録しており、それぞれに説得力のある内容となっている。
しかも、著者自身も「はじめに」で明らかにしているように、その分析対象は企業を取り巻く「業界」から、企業全体の活動(クラスターや地理的立地を含む)へと広がり、科学的にマネジメントを研究する「フロンティア」が拡大していくようすが感じられる。
 (比較的新しい内容のものが多く(90年代のもの)、情報システムなどにも言及している。)


面白い印象でした。私はこの本は各論文のバラバラ感が少しあって、そこで私は読むのをスルーしていた部分があります。

一方、こちらの書評をかいているよしえさん(←おいおい23歳かよ、すごいなぁ、と思った)は逆に広がっている様(さま)を読み取っています。一冊の本でこんなに印象が違うのか。
 
また、書評を読むと本の読み方もまったく違うアプローチに読めました。
私はこの本は比較的一つのことを述べている本として解釈していて、この本は”競争優位の戦略”で述べていた立地や技術上の自社の強みといったものをテコに競争優位をもたらすものを”戦略”とするならば、”他社と違うことを自体”というメタ戦略についてのみ述べているのではないかな、と感じました。


http://ameblo.jp/mansion-marketing/entry-10012675736.html

素晴らしい!

さすがハーバート大学のスーパースター。
本のページの角を折まくってしまった。

一度マインドマップ で整理してみたい。
具体的なコメントはその時に。


非常にシンプルで*伝わってくる*感想です。是非、マインドマップを書いてコメントしてもらいたいです。


http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001165.html

こうしたトレードオフの戦略をいくつも実行する。すると、戦略同士の一貫性、相乗効果、戦略の組み合わせの最適化という「フィット」の要素が今度は大切となる。活動間のフィットは大幅なコスト削減と強力な差別化につながる。こうして「強固に絡み合った一連の活動」は対抗するのが困難で維持可能な戦略となる。


私は感想上で”フィット”について述べませんでした。この本の上では”フィット”という概念も実際にはキーポイントとなります。

例えばDELLについて述べる時に、秀逸なSCMというものが、全社のオペレーションと密接に結びついています。このような全社のオペレーションが、差別化戦略→秀逸なSCMという戦略の策定→各オペレーションの作りこみということだとすると、これらの”フィット”は多岐に及ぶため、他社は簡単に模倣できないため持続的競争優位をもたらすということになります。
ただ、実際にはこのような”フィット”がトップダウンで設計できるものなのでなく、”フィット”の対象が創発的に生まれてきて、これらの創発的なオペレーションや作戦を企業戦略とマッチさせていっているのではないかと疑っています。果たして、サウスウェスト航空の事例研究でよく出てくるいくつかのポイントは最初から戦略の中に内包されていた(戦略をブレイクダウンした結果のもの)のでしょうか?実際には戦略を行っていった上で、発生したものを上手く吸い上げていっただけで、結果として”フィット”になったということに過ぎず。その上で、”フィット”は結果として”持続的競争優位”を作り出すにいたるものにすぎないのではないでしょうか?


 

posted by 山崎 真司 at 09:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦略論
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