山梨 正明著
東京大学出版 2400円(税別)
初版: 1988年3月
先日読んだからだ:認識の原点と同様にコレクション認知科学の第5巻となります。
比喩について考えたことありますか?私はありません。
この本は、認知心理学的に比喩を捉えた本かなと思って読んでみたのですが、むしろ言語学の本です。
・君はぼくの太陽だ
・彼女は母親のようだ
のようにそれぞれ文脈がなくとも意味が分かる比喩と意味が文脈に依存する比喩といった使い方や、
・硬い音色
・あまい声
のような、別の感覚(触覚や味覚を聴覚表現に使ってる)の表現で意味を補足するといった使い方などを分類・分析しています。
これまで、比喩というものについて考えたことはなかったのですが、比喩というのは言語体系(ラング)からなる文で表現できる意味空間を、比喩を使うことによってそれぞれの単語からなる原義的な意味とは違う意味空間を指し示すことができるということでそしょうか?
また、比喩について考えてみると、その言語学的な側面だけでなく、比喩を使うことで相手が理解していない概念や技術を漠然と理解させることができるという面も興味がでてきました。ただ、この本では、そのような学習においての比喩表現についてはあまり触れられていません。
なるほど、言われてみれば。
比喩ってのは一つの事象を別の角度から表現することによってより多角的に相手に伝えようとする手段、って感じかな?
だと思います。補足すると
この別の角度というのが、本来的な用法とは違うのが比喩、といったところでしょうか。
例えば、「硬い音色」の”硬い”は本来は音を形容する言葉じゃないし。
「マドンナは赤シャツを嫌っている」の”赤シャツ”は本来は特定の人を指す固有名詞じゃないといったところでしょうか。