2008年05月06日

ミューズ

赤坂真理著
講談社文庫 467円(税別)
初版: 2005年6月(文庫版 単行本は2000年3月)

この本は、男性としてどのように読めばいいのでしょうか?
現代の女性が抱える悩み。上の世代では男女差別といった社会と戦っていたものが、戦うべき対象がなくなってきている。逆に、現代の若い世代では過剰消費と戦っている(実際には勝ち目がないので、戦いでなく蝕まれている)のでしょうか?


主人公はモデルをしている高校生で、かなり年の離れた矯正歯科医に性的にも惹かれています。歯の矯正は雑誌などで見る「**がカワイイ」という自らの肉体も買うという消費者という立場、一方で(割がいいので)モデルやテレクラでバイトするという性の被消費者という立場、の間で揺れていると考えられます。

読みながら、消費者として何が欲しいのかという問いと共に、同じだけ(女性性という性的な意味での)被消費者に向けられる眼差しということを考えてしまいました。


この本の中では、過剰なまでの母親の影響と、同じようにまったく希薄な父親の影響、そして年上の歯科医の憧れということで、父性への憧れが描かれています。ここでの父性とは、”与える者”としての母性に対して、”制限をする者”ではないか、と考えています。例えば消費を与えるのでなくて、義務を与えるといった機能です。

現代の一緒に遊んでくれる”話の分かる、やさしい”お父さんは父性として機能していないのではないか、ということを考えてしまいました。


同じ赤坂真理の”モテたい理由”の書評はこちら

posted by 山崎 真司 at 08:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説
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