2012年12月26日
新しい市場のつくり方
昨朝は栄で開催した朝活@NGOさんに参加しました。課題本は三宅秀道さんの”新しい市場のつくり方”でした。「イノベーションに関する全ての本はイノベーションのジレンマへの長い注釈である」ということができますが、まさにこの本もそのような系譜の下にあります。
商品開発では、多くの場合に技術始動になりがちです。例えば車の開発時に、もっと速い車やもっと燃費のいい車を開発するという方向になってしまいます。そうでなく、新しい市場を創りだすべきというのが本書の主張です。
もちろん、誰でも出来れば新しい市場の方がいいと思っています。しかし、多くのメーカーは、既存の製品のリファインに終始しています。それではどうすればいいのでしょうか?
この本は文化人類学的アプローチと呼ぶのが適切でしょうか、なんとなくレヴィ・ストロースの本を思い出す事例ベースの本です。中小企業も含めた様々な事例を通して、ある種の市場の作り方を書き出しています。大量のデータから理論的なフレームワークを書き出すといったアメリカの経営学者が書くような本でなく、いくつかある手持ちの事例から事例を出して、理論を浮かび上がらせています。
例えば、ゴムのオムツカバーを作っていたフットマーク社が、夏の売上を補うために水泳帽を作った時、学校教育で水泳帽をかぶることで、プールの上からどこに生徒がいるか見やすく、また学年やクラス別に色を分けることで管理が容易になるというストーリーを教育機関側に売り込むことで、それまで存在しなかった水泳帽という市場を創りだすことに成功しました。
この本はこのようなエピソードをもとに定性的に市場を創るということを述べた本ですが、かなり面白い本でした。ストーリーを元に書いた本でも、実務家が自分の経験を語った本とは一線を画していて読み応えがあります。ただし、イノベーションのジレンマへの注釈にすぎないという気もしましたが。
2012年12月18日
哲学思考トレーニング
本のタイトルは哲学思考とありますが、実際にはクリティカル・シンキングについての入門書です。
ちなみにクリティカル・シンキングというと大きく3つのジャンルの本があります。ビジネス系、心理学系、哲学系です。
一番多いのはビジネス系ですが。実はクリティカル・シンキングというよりも単なるフレームワークの説明だったり、いわゆるロジカル・シンキングと混ざったものが多い印象です。例えば、MECE(無駄なく漏れなく)やSWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)などといった基本的な考え方が解説されているというものです。
次に心理学系の本については、人の認知バイアスについて書いたものが多いです。人は意外と合理的ではないので、気をつけていないと自分の不合理に気づきません。このテクニックを駆使したものが、オレオレ詐欺でしょう。話を聞く限りでは「そんなのにはだまされないよー」と思っても、実際には話の不自然さに気づかなかったりします。
そして第3がこの本のような哲学的な批判的思考です。そもそも、哲学自体が批判的思考のかたまりで、例えばカントの有名な本のタイトルが「純粋理性批判」や「実践理性批判」のような”批判”だったりもします。そもそも、これまでの様々な理論や意見を創造的に批判することが哲学と考えることができます。
この本は、前提と論理の違いや、事実判断と価値判断の違い、そして議論における前提の共有といった基本的な思考方法について書いてあります。また、クリティカル・シンキングの主題としても懐疑主義、倫理、科学の価値など、哲学っぽい内容を対象にしています。
クリティカル・シンキング初心者にはオススメですが、哲学の本など読み慣れている人には必要ないでしょう。
ちなみにクリティカル・シンキングの本といえばこれが一番だと思います。
2012年12月17日
リバース・イノベーション
クリステンセンのイノベーションのジレンマは、秀逸な本でいわゆる創造的破壊の構造を上手く書いたものです。トランジスタラジオは従来の真空管のラジオよりも、低価格ですが、音質がかなり悪いものでしたが、その低価格ゆえに全く新しい顧客を生み出すことができました。そして、しばらく経つと、トランジスタラジオの性能が進化して、性能的にも真空管ラジオをしのぐものになります。
このリバース・イノベーションは、このイノベーションのジレンマの実践版とも言える本です。リバース・イノベーションというのは、新興国向け商品のイノベーションを、先進国に逆輸入するといったものです。
これは、商品の海外展開という時に以前は先進国から先進国への輸出だったので製品の微調整といったローカライズでよかったのですが、先進国から新興国への輸出は注意点がいくつかあります。それは、先進国の製品から機能を削った廉価版ということでは売れないということです。例えば先進国で8万円で売っているテレビを小型にして少し質を落として4万円にしても売れないということです。そうじゃなくて、2万円や1万円のテレビを作らないといけないということです。テレビの場合は小型にすればいけそうですが、多くの場合は根本的に違うものを作らないといけないということになります。
また、商品によってはインフラの違いによる別のことを考えないといけません。例えば電力が不安定なのでバッテリーをつけないといけないかもしれませんし、食器洗浄機ならば井戸水や汚い水をろ過しながら食器を洗えるようにしないといけないかもしれません。例えばタイマー機能を削ったり、音声のお知らせ機能を削るといったようにある点では低機能にするにしろ、別の面(特に生活インフラのサポートのため)では高機能にしないといけないのです。
従来のイノベーションのジレンマ型の破壊的イノベーションが6割や5割の価格で7割の機能を満足すると仮にするならば、リバース・イノベーションは1割の価格で5割の機能を満足するようなものを作っていくということです(すごいざっくり言って) しかも、単に機能を減らしてというだけでなく、部分的にはインフラの足りない部分を補うように作らなければなりません。
そのためにはどう作るかが大事で実際に顧客の使用が見える新興国で開発する必要があります。そしてイノベーションのジレンマなどでもよく言われるようにリソースを適切に割り振り、独立した形で開発をする必要がありません。そして、上手くいくと、ここでの開発結果が先進国へフィードバックし、破壊的イノベーション的に働くかもしれません。その時に、社内での共食いが起こるかもしれませんが、他社に食われるよりはよっぽどいいということですよね。
2012年12月10日
マイケル・ポーター読むより孫子読め?
昨日は読書会関係の友人のおうちで忘年会でした。
名古屋アウトプット勉強会の次回の課題図書がマイケル・ポーターの競争戦略ということで、本があったのでチラ見したのですが...新鮮さがありません。まぁ、この手の本はよく読んでいるし、そもそもポーターの本もたいがい読んでるのであえてこの本を読む必要がないというのもあります...
そこで、他のメンバー何人かとこの本を読むことに関してお話をしてました。僕は以前は、この「マイケル・ポーターの競争戦略」のような解説書を読むならば、マイケル・ポーターの「競争の戦略」を読めばいいじゃん、と思っていたのですが、友人たちと話しているうちに少し意見が変わって来ました。たしかに、無理してポーターの本(原典)を読むよりは解説書でポイントだけを知って、そこからポーターの本を読むなり、もしくは読まないなりという選択をしたほうがいいと思うのです。
ちなみに「素直にポーター読んどけ」という意見に対して、友人の一人が「ポーター読むくらいなら、孫子を読んどけ」というツッコミに対して、別の友人が「ポーター読むような人は、孫子は読んでるに決まってる」というツッコミを入れたのがとても印象的でした。
たしかに、ポーターを読むような人は、ドラッカーもコトラーも孫子も読んでいそうです。ビジネス書をたくさん読んでいる人はやっぱり、こうなるんでしょうね..「新しい本読むのもいいけど、古典を読め」ということはよく言われますが、たしかにポーター読んでそうな人は古典も読んでいそうです。
僕の周りを見ていると、ビジネス書だけでなく他の分野の読者も同じようなことが言えそうです。「うわっ、この人読書家だなー」という人は、やっぱり、レヴィ・ストロースも読んでいれば三島由紀夫もルソーも読んでるという感じがします。
名古屋アウトプット勉強会の次回の課題図書がマイケル・ポーターの競争戦略ということで、本があったのでチラ見したのですが...新鮮さがありません。まぁ、この手の本はよく読んでいるし、そもそもポーターの本もたいがい読んでるのであえてこの本を読む必要がないというのもあります...
そこで、他のメンバー何人かとこの本を読むことに関してお話をしてました。僕は以前は、この「マイケル・ポーターの競争戦略」のような解説書を読むならば、マイケル・ポーターの「競争の戦略」を読めばいいじゃん、と思っていたのですが、友人たちと話しているうちに少し意見が変わって来ました。たしかに、無理してポーターの本(原典)を読むよりは解説書でポイントだけを知って、そこからポーターの本を読むなり、もしくは読まないなりという選択をしたほうがいいと思うのです。
ちなみに「素直にポーター読んどけ」という意見に対して、友人の一人が「ポーター読むくらいなら、孫子を読んどけ」というツッコミに対して、別の友人が「ポーター読むような人は、孫子は読んでるに決まってる」というツッコミを入れたのがとても印象的でした。
たしかに、ポーターを読むような人は、ドラッカーもコトラーも孫子も読んでいそうです。ビジネス書をたくさん読んでいる人はやっぱり、こうなるんでしょうね..「新しい本読むのもいいけど、古典を読め」ということはよく言われますが、たしかにポーター読んでそうな人は古典も読んでいそうです。
僕の周りを見ていると、ビジネス書だけでなく他の分野の読者も同じようなことが言えそうです。「うわっ、この人読書家だなー」という人は、やっぱり、レヴィ・ストロースも読んでいれば三島由紀夫もルソーも読んでるという感じがします。
2012年12月05日
メイカーズ 21世紀の産業革命が始まる
今、あちこちで流行っている本ですね。ロング・テール、フリーのクリス・アンダーソンの新作です。
この本は、マイクロメーカーとでもいうように各個人が物を作りやすくなるという現象について書いたものです。実際にソフトは、10年前、20年前よりも一人でかなりのものが作りやすくなっています。これは様々なコンポーネントが手に入るようになったためです。
そして、この流れはハードにも次は来るというのがクリス・アンダーソンの主張で、実際にクリス・アンダーソンは実際に自動操縦式ヘリコプターを売る会社を作っています。
これにはいくつかの背景があります。
1.工作機器のコストダウンが進むこと
個人用の3DプリンタやCNC(コンピュータ制御)の工作機器が、趣味の人にでも手の届くくらいになってきました。そして、これらの精度もどんどん上がってきています。
2.ウェブがいろいろなものをつなげるようになった
ウェブのおかげで、中国に外注したり、もしくは世界各国に外注することも簡単になってきました。逆に非常にニッチなニーズでも、ウェブを使って集客できるようになってきました。
3.ソフトだけでなくハードもコミュニティで作れるように
ソフトと同様に、様々なコミュニティで作られつつあります。例えばガラス製品を作るならば、がんばって技術に習熟しないといけません。しかし、3D CADを使って設計し、3Dプリンタがモノを作るならば、他人が設計したものの上に自分の設計を載せていくことができます。つまり、製造をコンピュータ化することで、巨人の肩の上に乗ることができるようになるのです。
この1と2は、時間が進むとどんどんと向上していきます。まだ日本ではメイカーズのようなミニ製造業というのはまだほとんどありませんが、ロング・テールやフリーがコンピュータとネットワーク能力の向上が背景として可能になったように、コンピュータ制御可能な工具の性能向上が、メイカーズを推し進めていくのは確実に起こりそうです。