2012年05月13日

地球の論点




Whole Earth Catalogという雑誌を出していたスチュアート・ブランドの環境問題に関する本です。昔からの環境保護主義者ということなので、イデオロギー的な、そして論理も何もないようものを想像していたのですが、全くそういうものではありません。むしろ、様々な本を紹介していくという、編集者的な本と捉えるのが妥当でしょうか。

主な論点は3つです。

1つめは都市化についてです。都市化、特にスラム化は様々な利点をもたらします。環境という面では都市は効率的ですが、スラムというのも実際にはかなり効率的ということです。これは面白い点です。都市が効率的というのは環境問題ではよく言われていますが、スラムも合理的に出来ていくというのが面白いです。経済学者が書きそうなネタですね。

2つめは原発です。(日本の事故以前の)最近の環境派は、基本的には原発賛成というのがトレンドです。ペブルベッドの小さな原発といったものを勧めるパターンが多いのですが、この本も同様です。この論点については現在とは状況が違うので、保留しておきましょう。

3つめは遺伝子組み換えです。私は基本的には遺伝子組み換え賛成派です。そして、著者も同様です。遺伝子組換えの長所・短所を考えると

長所
・効率的に食料生産が出来る。
・食料生産の際に、使用する農薬量を減らせる

短所
・印象が悪い
・遺伝子組換えによる影響を全ては予測できない
・遺伝子組換えを行う一部の企業に、種が独占される

といったところでしょうか。私は「効率的に食料生産が出来る」メリットが圧倒的と思っています。一方、短所としては一部の企業に種が独占されるという点を考えていましたが、この本を読むとそうではないことに気付かさせられます。一部の財団が支援して、発展途上国向けに、効率的な種子を作ったりしているです。一方、遺伝子組み換えによる影響を全ては予測できないという考え方や、宗教観から来る「印象が悪い」といった反対意見もあります。

保証できないからダメという考え方には多少の理解はできますが、一方で今飢えている人たちを目の前にして、「このボタンを押せば300万人を殺すが、代わりに(あるかないかわからない)遺伝子組換えの影響はなくなります」というボタンを押せるのかというと私にはとても押すことができません。


実は読む前は、昔ながらの環境保護主義者をイメージしていて、自分の主張と反対かと思っていたのですが、意外と同じタイプの人でした。しかし、自分の意見をゴリ押しするというよりも、様々な本を紹介していき、後はそれを読みましょう、といったスタイルだったのが好感がもてました。
posted by 山崎 真司 at 16:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会一般

塩の道



有名な民俗学者の宮本常一の本です。その名の通り、「塩」を中心として日本の伝統について述べています。いやー、塩という切り口でもいろいろ語れるのですね。

塩分を取るために山の人は塩をした魚を食べたが、塩が抜けないように煮るのでなく焼いて食べる、というのはいいとして。塩イワシを買うと、1日目は舐めるだけ、次の日は頭だけ食べるとか、次の日は胴体、そして尻尾と4日で食べるなんて初耳でした。

また輸送手段としての牛が意外と秀逸で、馬より細い道を行くことが出来、途中の草を食べながら行けるとか。また、商人が南部鉄を運んだ牛をそのまま売って帰るので南部牛があちこちにいたのではないかと述べています。


この本を読むと、昔の日本については知らないことだらけです。言われればそうかもね、とは思うものの全く考えもしたことがないことだらけなのが刺激的です。逆に、自分の昔についてのイメージがいかに、テレビの大河ドラマや時代劇といった薄っぺらい作り物の印象から来ているかということを自覚させられる本でした。
posted by 山崎 真司 at 06:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会一般