2012年04月25日
成功者は皆、ストーリーを語った。
元大物映画プロデューサーで、元ソニー・ピクチャーズ他のCEO。現在はUCLA教授そして、MLBのマイナー球団を多数経営し、NBAのウォリアーズのオーナーという著者によるストーリーテリングについての話です。アメリカの教授はすごい人多いですね。
本の内容は、全編ストーリーテリングでこう上手く行ったという事例です。ストーリーテリングのコツは多少述べていますが、どちらかといえば、ストーリーこそがポイントであるということのみを語った本と言えます。とても面白い本ですが、理論的なところはあまりありません。また、同じことが繰り返されている本なので、その点好き嫌いがありそうです。
ちなみに私は結構面白かったです。図書館で借りたのですが買おうかどうか悩み中です(ちなみに著者の書いたほぼ同内容の記事を以前HBRで読んだので、買うまででもないか、とも思って悩み中なのです)
2012年04月19日
歴史を変えた気候大変動
邦題は何やら地球温暖化を暗示するようなタイトルですが、原題はThe little Ice Age(小氷河期)です。
この本は過去1000年のヨーロッパの気候と歴史についての本です。なぜヨーロッパかって?それはデータが多いからです。20年以上前ですが日本についても江戸時代以降くらいでは同様の内容の本を読んだ記憶がありますが、こちらの本はヨーロッパ全般の本なのでよりダイナミックです。
この本を読むと、当然のことながらヨーロッパは気候変動によって大きな影響を受けたことが分かります。グリーンランドへのノルウェー人の移住とその消失については聞いたことがありますが、この本ではその移住が鮮やかに描かれています。このエピソードが1章にあるため、一気に引きこまれました。この手の本はどちらかというと淡々となりがちなのですが、この”歴史を変えた気候大変動”では気候と民衆の生活史といった感じでかなり具体的に描かれています。
歴史は、水温の影響を受けるタラを追いかけたり、ジャガイモを食べようとするかどうかにかかっていたのです。穀物は寒さによっても、干ばつによっても収穫量は激減します。そして疲弊して体力が落ちた民衆は、ペストなどの伝染病に弱くなります。当然、伝染病や飢饉は戦争や政治体制に影響を与えます。
著者は慎重に「歴史は気候によって起こった」と言うことを避けていますが、この本を読むと気候が歴史に対して与えた大きな影響を知ることができます。”歴史の補助線”という言葉がよく似合う本だと思います。
ちなみに友人が発見したのですが、本書の表紙の絵はブリューゲルの「雪中の狩人」とありますが、実際には「戸籍調査」という絵で間違った絵が乗っているようです。原著も同様の間違いがあるようですが。
2012年04月16日
黄金比はすべてを美しくするか?
ピラミッド、パルテノン神殿、モナリザ、全てに黄金比が用いられていると言われています。それでは、黄金比とは何でしょうか?そして、黄金比が美しく見せるのでしょうか?
この本は物理学者が、黄金比の歴史と共に、自然界で様々なところで見られる黄金比について語っています。オウムガイの螺旋が、そしてハヤブサの飛行コースは黄金比になります。考えたことはありませんでしたが、これは納得の理由です。特にオウムガイのような生物に表れるパターンが黄金比になる(そしてフィボナッチ数列)になることは、自己組織化ということを考えれば当然の帰結に思えます。このような黄金比のようなパターンになるならば、比較的単純なルールで設計図を書けそうです。
また、これまで黄金比は、様々な美術作品の中で見られるということは聞いたことがありましたが、この本を見るとその誤りが分かります。様々なものに見られる黄金比は、どうしてその領域とその領域を取り出したのか?、また黄金比っぽいものを黄金比と言ってしまうことができることから、いろいろな絵から「この絵には黄金比が使われている!!」と言い切ってしまうことができるのです。そして、この本を読むと、ピラミッドにも、パルテノン神殿にも特に黄金比が使われているわけじゃないことが分かります。もちろん黄金比っぽいものは見つけられますが。
この本では、途中から黄金比はフィボナッチ数列がメインに変わっていきますが、ここからが面白いです。実際に、フィボナッチ数列と黄金比は強く関係しており、連続するフィボナッチ数列の比は黄金比に漸近していくのです。また、さらにこの黄金比はフラクタルとも関係していきます。考えことはありませんでしたが、たしかに黄金比とフラクタル構造というのは非常に似たものなのです。
タイトルから黄金比と美というテーマを期待して読んだのですが、実際には黄金比と美の関係はグレーで、むしろ絵の中の黄金比というのはむしろ誤りだったようです。しかし、この本は日常を数学という断面から切り取って、新しい視点をもたらすという点で期待以上の本当に面白い本でした。
2012年04月09日
新ネットワーク思考
僕でも名前を知っているので、おそらく有名なアルバート・ラズロ・バラバシのスケールフリーネットワークの入門書です。
スケールフリーネットワークについては、たしかダンカンワッツの”スモールワールド”を読んだことがありましたが(正確には挫折した)、こちらの方が遥かに読みやすいです。スケールフリーネットワークやスモールワールドといったネットワークに興味のある方は是非読んでみてください。ちなみに個人的な趣味としては、歴史はべき乗則で動くや自己組織化と進化の論理も一緒に読むと面白いのではないかと思います。
