2012年03月08日

ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる



この本はマイミクの方のご厚意でいただいた本です。この御恩は、その方でなく別の方にお返しさせていただく予定です。これを機に持っていたけど使っていないPSPを別のマイミクさんにプレゼントしました。また、本のプレゼントも考えています。今回は本を4冊いただいたので最低8冊の本をどなたかに贈ろうと思っております。詳細は少々お待ち下さい。このように贈り物の連鎖が起こるといいですね。


さて、この”ブーメラン”は映画化された”マネー・ボール”や”世紀の空売り”で知られるマイケル・ルイスの新刊です。ちなみにブーメランというのは、サブプライムローンに端を発する金融問題が世界中をグルグル回ってヨーロッパ(ギリシアやアイスランドなど)に行き、そしてそれがアメリカに帰ってくるというものです。

この本の前作にあたる”世紀の空売り”は、サブプライムローンに気づきリーマンショックで大儲けした人たちのストーリーではらはらしながら読んでいきました。一方、こちらは現在という固定された時間で、アイスランド、ギリシア、ドイツなど様々な地域でのショックを語られるというものです。前作が、ハリウッド的な爽快感をある種もつ小説とするならば、今回は様々な地域での悲劇を描いたノンフィクションといった趣です。

訳者解説にも出てくる言葉ですが、この本を読むと「すべての幸福な家庭はどれも似ているが、不幸な家庭はそれぞれの仕方で不幸である」という言葉が思い浮かびます。

・もともと財政の報告で虚偽の報告をしていた上に、国民の多くは税金は払わず、公務員がそれぞれ自分の私利私欲を目指しているギリシア
・全員がバブルに踊ったが、最大の問題は銀行の負債を国が抱えることにしたアイスランド
・国の生産力はユーロ圏随一だが、投資先を見る目がなくサブプライムローン問題の負債を一気に抱えた地方銀行のあるドイツ
・公務員の年金問題が噴出したアメリカの地方都市

それぞれがそれぞれの不幸を抱えています。

個人的には、アイスランドの銀行の問題は、国は関係無いだろとか思うのですが(IMFの影響?)、それ以外のほとんどがある種の必然性を持って現在の不幸になっています。


ところでドイツはギリシアのためにどこまでの財政支出をすべきなんでしょうか?ドイツ国民は、ギリシア国民にお金を「恵んであげる」必要があるのでしょうか?必要があるならどのくらい?


先進国はサブサハラ(サハラ以南のアフリカの貧困地域)に対して人道的な観点から財政を支出すべき、と私は信じていますが、「ドイツがギリシアのために財政支出すべき」かと問われると「おそらくノー」と答えます。そうはいっても、通貨の安定という人質を取られた状態なので、多少は「恵まざるを得ない」という状況になっています。


ちなみに、この本が、世紀の空売りのような爽快感がないため面白くない一方で、マイケル・ルイスの他の本と決定的に違うのは最後の章の「あなたの中の内なるギリシア」と題したアメリカの地方都市について書かれた部分です。

ドイツとギリシアの関係は、アメリカの中の(そして日本の)主要都市と地方都市の関係とも言えます。先進国では経済成長が落ち込んできており、大きな成長を前提に設計れたシステムには問題が現れています。これは公務員の年金問題などの隠れコスト(実際には隠れているんでなくて、大騒ぎされないように隠している)の問題です。企業の場合は、倒産という分かりやすい形で清算されるのですが、地方都市は基本的に精算できません。

やっぱり、この問題はアメリカだけの問題じゃないですよね。以前にふるさと創生資金で云々とか言って浮かれていた人たちはどこにいったのでしょうか?きっと日本では、この問題が世代間格差となって、大きな問題になってくるのでしょう。そして日本もアメリカも、各人が自分の利益を最大に追求するという民主主義の行き着く先にいるということでしょうか?


私個人は、今の世の中は昔よりも良いものであると確信しています。なんだかんだ問題はあっても、第二次大戦前の状況よりも良いし、冷戦下よりも幸せになっていると思います。一方で、まだまだ十分でない、とも思っています。未来をイメージしない思考停止の先にある”今すぐそこにある危機”がこのブーメランの中では述べられていると思いました。


余談ですが、この本を贈ってくれた人は、ドッグイヤー(本の端を折るアレ)を下につける派でした。僕は上につける派だったので、ちょうど二人分のドッグイヤーを意識しながら再読するつもりです。
posted by 山崎 真司 at 16:16| Comment(2) | TrackBack(0) | その他、ビジネス書