2011年12月25日

2011年のベスト10

昨年も今年読んだベスト10というのをやりましたが、今年もやってみます。

2010年のベスト10はこちら。ちなみに、stiloさんの"2011年に読んだ本から10冊選んでブログで発表しよう! #10book2011"に応募しております。このブログには他のブロガーの方の今年のベスト10へのリンク集です。是非チェックしてみてください!!


ちなみに私は今年も小説を合わせると150冊くらい読んでるので、ほぼ例年通りでしょうか(ここ7,8年は平均すれば200冊前後で安定?というか、子供の頃から平均すればずっとこのペースか...) 新刊をあんまり読んでないとかいう話もありますが、ビジネス書は買ったりもしてます(で、読んでない、と^^;;)


というわけでベスト10です。

1.予想通りに不合理
予想どおりに不合理[増補版]
ダン アリエリー Dan Ariely
早川書房
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無料チョコの実験で有名な行動経済学者ダン・アリエリの本です。行動経済学としてますが社会心理学者といってもいいでしょう。この本は一級の心理学の本ですし、同時に実生活やビジネスへの応用も様々考えられます。しかし、一番良いのは、それらをすべて実証的に実験したものから述べているということ。そして、何よりもアリエリの実験好きということが感銘を受けます。読んでいると、本当に実験が好きなんだな、ということが感じられます。読んでいてこちらも楽しくなる本でした。


2.ホワイトスペース戦略
ホワイトスペース戦略 ビジネスモデルの<空白>をねらえ
マーク・ジョンソン Mark W. Johnson
阪急コミュニケーションズ
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イノベーションのジレンマで知られるクレイトン・クリステンセンの仲間のマーク・ジョンソンの本です。どうやってイノベーションを起こすか、という企業戦略についてシンプルなアイデアから説明しています。アイデア自体はシンプルですが、非常な説得力を持った本です。今年読んだビジネス書の中で一番楽しむことが出来ました

以前、書いた記事はこちら


3.創造的破壊
創造的破壊――グローバル文化経済学とコンテンツ産業
タイラー・コーエン
作品社
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インセンティブといった経済学コラム本(?)で知られるタイラー・コーエンの本ですが、サブタイトル通り「グローバル化と文化・コンテンツ産業」の関係の本です。グローバル化をすることで、地域文化は廃れると直感的に思われますが、実際にはグローバル化によっての経済の発展が後押しをすることで、文化の多様化が進みます。
グローバル化=悪という直観主義者も世の中には多いようですが、様々な論点と、直感の逆の結果であるという意外さが面白かったです。

以前書いた記事はこちら


4.自由論
自由論 (岩波文庫)
自由論 (岩波文庫)
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J.S. ミル
岩波書店
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自由論 (日経BPクラシックス)
ジョン・スチュアート・ミル
日経BP社
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今更すぎる古典ですね。読む前は、自由であることの良さは、自明であるということから論を展開しているかと思っていたのですが、多様性ということから自由が良いという基礎付けをしています。形而上学的な問題については、細かく突っ込めばキリがない。いや、それを決めることができないのが形而上的な特徴なんですが。それでもある種の説得力をもって、自由を基礎付けながら、自由を論じているというのは非常に面白かったです。


5.聖なるもの
聖なるもの (岩波文庫)
オットー
岩波書店
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様々な宗教について、ヌミノーゼという神聖で畏るべきものという切り口から語っています。このヌミノーゼという概念を知ることで、様々な宗教やそれに連れての思想を考えることが容易になります。これは宗教思想を読み解く補助線として非常に有効なツールだと思います。

以前書いた記事はこちら


6.一六世紀文化革命
一六世紀文化革命 1
一六世紀文化革命 1
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山本 義隆
みすず書房
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一六世紀文化革命 2
一六世紀文化革命 2
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山本 義隆
みすず書房
売り上げランキング: 115505


3部からなる大著、”磁力と重力の発見”の弟分といった本です。ベーコン、デカルトがいて、ギルバート、ガリレオ、ケプラー、ニュートンが活躍した17世紀はどういった背景から成立したのでしょうか?ガリレオやデカルトの天才が、それまでのアリストテレス的世界を破壊したのでしょうか?
歴史の間に埋もれがちな16世紀に焦点を当ててそこで何が起こったのかを説明しています。それは印刷技術と、職人階層が大きなポイントになります。西欧でのギリシア科学の崩壊の様がどのように行われたか、多面的に知ることができる非常に好奇心が満たされる二冊でした。

以前書いた記事はこちら


7.十二世紀ルネサンス
十二世紀ルネサンス (講談社学術文庫)
伊東 俊太郎
講談社
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12世紀ルネサンスというのは、西欧へのギリシア哲学・ギリシア科学の逆輸入のことです。これは十字軍によって起こったと思っていたのですがそれだけじゃなかったのですね。そして、そもそもイスラム社会でのギリシア哲学・ギリシア科学はどうして起こったのでしょうか?こういったことを概観することができます。漠然としていた西洋の中世のイメージが少し分かるようになりました。

以前書いた記事はこちら


8.そのひとクチがブタのもと
そのひとクチがブタのもと
ブライアン・ワンシンク
集英社
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海外の心理学系のブログでしばしば名前を見るブライアン・ワンシンクの主著です。タイトルは専門書っぽくないですが、この本は一般の人が読んでも楽しめる専門書です。
心理学からダイエットを考える本です。実際にはダイエットにまつわる心理学のあれこれといった内容ですが、それでも数多くの面白い実験とそれに伴うダイエットに使える知識満載の本です。


9.なぜあれが思い出せないのか
なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎 (日経ビジネス人文庫)
ダニエル・L. シャクター
日本経済新聞社
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記憶に関しての本です、もともとはマイケル・ガザニカの脳の中の倫理という本で述べられていたので読んでみました。偽りの記憶や、つい物忘れをしてしまう理由など記憶について全般を分かりやすく解説した良著です。


10.今この世界を生きているあなたのためのサイエンス
今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉
リチャード・A. ムラー
楽工社
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今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈2〉
リチャード・A. ムラー
楽工社
売り上げランキング: 4500


原子爆弾と原子力発電所はどう違うのでしょうか?衛星の高さによって、どういう違いがあるのでしょうか?物理の様々な応用を高校生にも分かるように語った本です。3.11の前に読んでいたので、メルトダウンや半減期とはどういうものかが分かっていましたが、今はこのあたりは様々な本があります。また、著者は原子力発電賛成派としてこの本を書いていますので、今となってはそれに違和感を感じる人がいるかもしれません。
しかし、それでも太陽光発電で車が動かせない理由(エネルギーが足りない)、炭疽菌テロの難しさや、どうしてワールドトレードセンターが崩れたかといった説明は事実であり知っておいて損はないことだと思います。

以前書いた記事はこちら(1の記事2の記事)。


よろしければ是非読んでみてください。
posted by 山崎 真司 at 14:03| Comment(2) | TrackBack(0) | その他、一般

2011年12月18日

アルケミスト

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)
パウロ コエーリョ
角川書店
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8、9年まえに読んだのですが、久々に再読しました。

以前、読んだ時はかなり素敵なお話だったという印象だったのですが、今読むと違和感を感じました...また、以前はキリスト教っぽいと思っていたのですが、読み直すとキリスト教っぽいというよりもニューエイジっぽいなぁと感じました(コエーリョはやっぱりニューエイジのようですね)

内容は、南スペインの羊飼いの少年が、アフリカへ宝探しの旅に出るというものです。そして少年は旅の途中で、商人や錬金術師などと出会います。

この物語は、よくある”往きて帰りし物語”の構造を持ったいかにも寓話っぽいものです。それはいいのですが、そこかしこに見られるニューエイジ臭が鼻についてしまったので、改めて読み返すとイマイチだなー、と感じてしまいました。

posted by 山崎 真司 at 20:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2011年12月16日

美学への招待

美学への招待 (中公新書)
佐々木 健一
中央公論新社
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(以下はこの本にあることで考えたことも少し含みますが、基本的には本の考えを踏襲していると思います。。。たぶん。)


経験的には、芸術鑑賞というのはセンスの問題だと思っています。何度もその対象に触れているうちに、見る目が養われていくというのが経験的にあります。その結果、どういうものが美しくて、どういうところを見るのかがわかってくるのです。

しかし、これは本当でしょうか?

細工の細かさといったものや、写実的な絵においては経験によって見る目が養われていきますが、それ以外は「世間的にいい絵と言われているもの」を”いいもの”として学んでいるだけかもしれません。また世間的な芸術家の格といった背景知識を手に入れることで、作品そのものを見る目が養われているわけではないかもしれません。


たぶん、このセンスというものを考えていくのが美学だと思います。この美学への招待では、美的体験とい美的範疇というものをまず19世紀的な美学の主題として説明しています。美的体験というのは、今風にいえば、クオリアに近いでしょうか?実際に見たものを美しいと直感的に感じることです。一方、美的範疇というのは、こういうものが美しいという概念モデルの集まりでしょう。例えば、”青い空が広がった絵は美しい”と感じる、”写実的な描写の絵は美しいと感じる”、”黄金比を駆使した構図は美しいと感じる”、”光と影の対比を使った絵は美しいと感じる”、といったように絵には美しさのパターンがあります。このパターンをさらにもう少し大きい枠でまとめていくと、美しい絵のデザインパターンとでもいうべきものが見えてきます。これは作る側から見るとデザインパターンですし、受け手から見ると美的範疇になります。

この19世紀までの美的体験と美的範疇による美学に対して、20世紀は解釈と美的概念がそれにとってかわりました。これは、今風に言えば、美的コンテンツから美的コンテクストへの移行でしょうか?

写真の発展により、写実的であることの価値が失われてきて(また絵の具の発展も含めた主題の変化に伴って)印象派といったものが20世紀の初頭に表れましたが、そこから、ありものの便器にサインをして作品としたデュシャンやウォーホルなどのような行動する芸術家といった人たちの作品は、作品自体の内在的な価値というよりも、解釈するコミュニティ(アート・ワールド)内での他との関係からなる価値というものになっています。このコンテンツ→コンテクストの移行が20世紀の主題であり、美学を複雑にしているものでしょうか?

私たちは、記号論のようなツールを使ってコンテクストならびに作品を解釈しきますが、思わず昔ながらの考え方によっても現代的な作品を解釈してしまおうとします。この本では、それを「永遠の藝術」と「現代的藝術」という対立で述べています。誰が見ても美しいような「永遠の藝術」というものがあり、それは分かりやすいものとして美術館に飾られます。
これに対して、アート・ワールドで価値を持つような「現代的藝術」はそのコンテクスト内で価値を持ちます。つまり、この価値は”現代的”であり、共時的な体系(つまりの瞬間)において持つのです。そして、「現代的藝術」愛好家は「永遠の藝術」愛好家とは別のものになります。この本によると、「現代的藝術」愛好家は、より熱狂的なのです。そして、この「現代的藝術」はある種の破壊をするために、その作品は「永遠の藝術」性がおうおうにして低いことがあり、場合によってはそれが低いこと自体に価値を持ちます。

つまり、作品には、コンテクストvsコンテンツという対立があるのですが、これは作品内に内包している美しさ(「永遠の藝術」性)と、作品が生まれた時に体系内で存在した相対的価値(「現代的芸術」性)とのせめぎあいという形で解釈しなければならないのです。
posted by 山崎 真司 at 16:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 哲学、人生論

2011年12月15日

ゲームの変革者

ゲームの変革者―イノベーションで収益を伸ばす
A.G.ラフリー ラム・チャラン
日本経済新聞出版社
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P&GのCEOのAGラフリーと、有名なコンサルタントのラム・チャランが書いたものです。

”ゲームを変える”イノベーションを起こすために、イノベーションを起こす企業文化をどう作り、どう行動するかについてP&Gを中心として述べられています。P&G以外にはデュポンの最近の取り組みなどが若干触れられています。

P&Gでの特徴は、イノベーションを作るための組織があることでしょうか?アメリカの有名な企業IDEOを思い出す、ミニIDEOともいえるスタジオを企業内に備えていて、ミニIDEOのファシリテーターが依頼部門と一緒にイノベーションを起こしているといったことをしています。

もちろんP&Gのような大きな組織でなければ、社内にミニIDEOを作らなくとも、イノベーティブな組織を作ることは可能です。それは、失敗をおそれないようにする人事体系や、他者とのイノベーションを促進するような社内規律(ディシプリン)をひくことでできそうです。また、商品開発をするような組織では、売上における新製品比率の目標値を定めるといったことを行うといったことは中小企業でも可能そうです。実際に、私が知っている抽象の企業(ソフト屋さん)でも、新製品を作らないといけないということをトップはわかっているものの、社内にそれが広がっていないので、結局、頭がわかっているけど手足がついていかないといったところが多いです。

また、新製品を作っていくということは、短期的な目標よりも長期的な目標を重視するということでもあります。部門の業績(利益)をあげるために、経費を抑えるといういわゆるボトムラインのマネージメントでなく、売上をあげるというトップラインのマネージメントを考えなければイノベーティブな企業は作れません。


この本は、イノベーションを行う企業(P&G)の一例を中心に、その企業のアレコレを細かく語っているという本ですが、中小企業も含めて多くの企業に示唆がある本だと思いました。逆に、一般的というよりも、ケース解説といった印象が強い本なので、そこが残念ですが..

posted by 山崎 真司 at 11:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 戦略論

2011年12月04日

メディア・バイアス

メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)
松永 和紀
光文社
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納豆が健康に効く、農薬について、遺伝子組換えについてなど、食品関係を中心としたメディアの無責任さについて説いた本です。

言うまでもなくメディアは刺激的なニュースや情報を流したがりますし、「**は危険!」のような情報を消費者が求めています。こういった情報は、「**の専門家***がこう言っています」という形で提供されます。もちろん分かりやすい情報じゃないといけませんので、そこには量や細かい条件などは消えていきます。


著者の非難は、自らの利益のために「**は危険」と主張する研究者(変な水や健康食品のメーカーに関係する人や、環境関係のNGOの人とか)でなく、それを無批判に受け入れる一般の人でなく、メディアに集中します。たしかに、メディアにとっては「分かりやすくないとウケない」、「**は安全というと後が怖いが、**が危険というのは問題がない」という非対称性があります。また、リスクを含めて正確に伝えるためには、メディア側にも知識が必要ですし、それを専門家に聞いても歯切れの良い答えはあまり返ってきません。その辺の(自称)専門家に聞けば、いくらでも消費者が言って欲しいような形で断言してくれます。


この本は、メディアのテキトーさ加減と、その背景を読むという本であると同時に、実際の問題についてのクリティカルシンキング(批判的思考)の練習本としても秀逸です。現実世界での、様々な報道をどのように受け取るかを考えるには一冊でした。
posted by 山崎 真司 at 06:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会一般