僕が参加している読書会でとても人気のある本、”磁力と重力の発見”を書かれた山本義隆さんの本です。”磁力と重力の発見”番外編とでも言えるような本です。
この本はタイトルの通り16世紀でどのような革命的なことが起こって、そしてデカルト、ベーコン、ガリレオ、ケプラー、ニュートンらが活躍した17世紀の科学革命につながったかというのを述べる本です。
この本を読むと、16世紀というのは、グーテンベルクの後の時代で印刷技術が盛んになったことというのが一番大きな背景になるでしょうか?このような背景の下、デューラーのような精緻な版画作家の後の時代として、様々な書物が生まれていきます。
これまでグーテンベルクの印刷技術というのは、ラテン語でなく民衆のわかる言葉での聖書の発行により思想を発展させたことや、写本と違って出版コストを圧倒的に下げることで知識の拡散に影響を与えたものと思っていたのですが、この本を読むとポイントはそこでないということを思います。
つまり、図版を多用した本を出版することにより、これまで口伝でしか伝わらなかったことが文書化できるということです。これまで本を書いても、文字情報だけで伝えなければいけなかったものが、図と絵を使うことで容易に相手に伝えることができます。例えば、この本でも”メタリカ”という本の挿絵として、鉱山で使用するポンプの絵が出てきますがこれは挿絵と言葉で伝えるのとでは大きな違いです。
これを支えるように、プトレマイオスの本の再発見とその応用により、15世紀に遠近法の基礎が確立していたのです。
また、鉱山のポンプと同様のことは医学にも大きな影響を与えます。人体の精緻な挿絵は、それまでのガレノス、アヴィセンナ、アヴェロエスといった古代ローマ、イスラムからの思弁的な医学を、実践的な医学へと進めていきます。この医学を進める原因には、さらに火薬の発展により戦争形態の変化もあります。
他にもいくつかの論点から16世紀の文化革命について述べていますが、基本的には”文書化”ということがすべての背景にあるようです。この本は、1つの事柄を様々な領域での事柄から論証していくという重厚な論の進め方をしています。こういう本は私の好みなのですが、あまり日本では見受けられません。ちなみに、日本のビジネス書が薄っぺらい印象なのもこのせいだと思ってます。
”銃・病原菌・鉄”に目頭を熱くした皆様にオススメの一冊です:->
ちなみに同時にこの本も読むと楽しめます。
こちらは本当に面白いです。あらゆる人に読んでもらいたい本です。