カフカの未完の大作です。審判や変身と同じ世界観ですが、これはユダヤ的な世界観でしょうか。つまり絶対的な律法の世界観です。キリスト教的な”赦し”がある世界ではなく、畏敬の対象である圧倒的な支配する力です。
これは、教会の塔にも似た城という形で、主人公Kの前に表れますが。実際には眼前に現れるのでなく、この城の見えない支配の力が主人公Kを圧倒します。ちなみにKはもちろん、カフカのKでしょうが、私は読みながら何故だかキルケゴールをイメージしてました。いや、この重々しい香りと方向性は違うかもしれないが漂ってくる宗教臭が似ているからでしょうか?
このK以外の登場人物は、すべて職業という形でラベリングされたものです。それぞれがどこかおかしいけど、それぞれの視点としてはまっとうというキャラとKが繰り広げるドタバタコメディーなのですが、実際にはメタ的な視点でのコメディーであって、全体的には鬱屈とした前に進まない感じがこの城の特徴です。
別の視点からこの本を読むとすると、ミシェル・フーコーのパノプティコンといった視点なのでしょうか。まぁ、フーコー嫌いなんでアレですが、圧倒的な監視の力という絶対力があたかも神の偉力のように隅々まで行き渡っています。そして、主人公であるK以外のすべての村人も、監視されていると同時に、監視する主体として城というシステムに組み込まれています。この世界観を読み取るために、監獄の誕生を読むか城を読むかといえば、こちらの方が面白いと思います。小説と現代思想を並べるとその筋の人には怒られそうですが...
この小説は、読んでもグツグツグツといった感じでカタルシスがほとんどありません。ここが好みの別れるところだと思います。