ナシーム・ニコラス・タレブ著
ダイアモンド社 2000円(税別)
初版: 2008年1月
タイトルは「まぐれ」ですが、何がまぐれと言っているのでしょうか?
全部です。
いや、ほとんど全部です。いや、多くの事柄のかなりの部分といったところでしょうか。
この本のポイントは3つでしょうか。まず、1つめは人間はある結果に対して運の要素をあまり考慮せず、何かの原因を探してしまう傾向の指摘でしょうか。
2つめには、稀にしかないことを無視してしまうことです。例えば、ある国の国債がアメリカの国債よりも金利が2%高いとします。これはアメリカの国債が債務返済不能にならないと仮定すれば、もう一方が簡単に計算すれば100/2 = 50で50年に一度債務返済不能になってしまう確率があるならばあまりいい国債と言えません。一方で50年に一度債務返済不能になる確率はあるでしょうか?
3つめですが、確率的に歴史を眺めるといった視点です。この本はサブタイトルが「投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」となっていて著者は投資家なんですが、この著者の投資哲学から来た概念でしょうか。
この確率的に歴史を眺めるというのは起こらなかった歴史も考慮するということです。投資の世界において、例えば上がる確率が90%、下がる確率が10%といった場合でも、上がる場合の金額の期待値と下がる場合の金額の期待値を考慮しないといけないです。そして結果を見てパフォーマンスを評価するときでも、結果として上がったこと(もしくは下がったこと)のみで評価するのでなく、起こらなかったもう一つの可能性も考慮して判断を評価しないといけないということです。
実際に、人間はあることが起こるとその結果のみに注目してしまいますが、実際には判断の正当性を評価して、それは起こらなかった歴史を考慮しないといけないです(そうしないと、例えば90%の確率で10円あがり、10%の確率で100円下がるようなものの売買について、買う方がベターという判断になりがちです)。実際に、日常でもこのような起こらなかった歴史について考えながら、行動を判断するというのはとても刺激的な経験となります。
とにかく、この本は私が読んだ中では今年のダントツ一位の本でした。
他の方の書評を読んで:
こちらの書評はそのままといった感じでしょうか。既存の金融工学が、”科学的”なアプローチをしていて、正規分布でないものを正規分布と仮定した上で成り立っているといった問題を指摘している本といった読みでしょうか。
http://blog.livedoor.jp/sioyakioh/archives/455734.html
ただ、そういう人間と付き合いのある方はこの本を読むことを特に勧める。
その人の真の実力を測る判断材料のひとつとして。
副題にあるように、人は「運を実力と勘違いしやすい」のだ。
無論、最も読むことを勧めるのは運用やトレーディングに従事しているその人自身なのだが。汝自身を知れ、とはこのことである。
そういえば、うちの兄貴が大学に受かったのは”まぐれ”と言ってました(たまたまヤマが当たった)、学歴によって第一印象が決まるならば、こんなベースにも”まぐれ”がありました...
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50992418.html
このオビは読んだ瞬間ダメだーっ、と思いました。しかし、本書を読んでいくと、このオビ自体の否定をしています。その皮肉がいーなー、と思いながら興味深く読みすすめました。こちらのレビューの著者も同じ気持ちだったのでしょうか?
本書のメインディッシュは、カール・ポパーの半焼主義、失礼、反証主義 である。それが科学者の言葉ではなく、金融屋の言葉で書いたその部分こそ、出師の表なのだ。
たしかにこの本は、金融屋が書いた本ですが、この本は哲学者が書くこともできた本だと思いますが、むしろ金融屋こそが書くべき内容の本であると思います。実証主義でしょうか(大嘘)。
http://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20080211
そういえば、こちらのブログはRSリーダーでずっと読んでいるのですが、所属がROR団なんて不思議な団なんですね...(←プロフィールはRSリーダでは読めないから気づきませんでした)
