畑村 洋太郎著
講談社 1600円(税別)
初版: 2006年10月
内容:
サブタイトルは「だから失敗は繰り返される」となっています。失敗から何を学ぶかということをテーマに、実際に起こった9つの事例を元にそれぞれの背景や原因などを記述しています。
とりあげられている事例は以下の9つです。全てが大きな事故であり、かつ新しいものが取り上げられています。
1.六本木ヒルズの回転ドア事故
2.JALのトラブル
3.JR福知山線事故
4.金融システムの失敗(みずほ銀行の合併と東京証券取引所のシステムトラブル)
5.三菱自動車のリコール隠し
6.2002〜2003年に頻発していた工場火災
7.JCOの臨界事故
8.H2Aロケットの打ち上げ失敗
9.JR羽越線脱線事故
感想:
これまで気になっていたのですが、畑村氏の著書というのは初めて読みます。テレビや雑誌の記事などでは「失敗学」というのは知っていたのですが、まとまったものを読んだのは初めてです。
失敗についてそれぞれを、背景や原因にとどまらず、また制限をかけずに分析しており、とても参考になりました。また、同時に日常の安全に潜んでいる危うさ(基本的に安全と思っていることの危うさ)を感じました。
読んでて思ったことやポイントは
・「制御安全」と「本質安全」
「制御安全」は安全になるシステム(緊急停止装置などのような)を組み合わせて、結果的に安全にする。「本質安全」はモノ自体が安全。品質管理でいう従来式の品質管理とシックスシグマかと一瞬思ったのですが、実際には製品の”安全管理”での指向なので概念的にはだいぶ違いますね。
・人の注意力には限りがある
小さなトラブルがあると、マスコミや上司などが細かい部分への指摘をがんがんして本質的な部分への注意が薄れてしまう。根本的な安全対策への対応などへの指摘が行われることは一般的に少なく、瑣末的な部分の指摘が増える。
マニュアルがどんどん分厚くなっていき、最後には誰もマニュアルを読まなくなっていったり。チェックリストがどんどん増えていって、最後に形骸化していくのも同様の流れ。外野の完璧主義者(他人に対して完璧を求める人)が特定多数に対して”あるべき論”で押し付けているうちに、本質の知識の伝承が消えるのが悪い?
・今後の事故は、利便性を求めたときに起こるものが大半になる
例えば、毎日必ず10時に届けるトラック、とかタイムスケジュールを必ず守る電車のようなものがあった際に、利用者が遅刻してもスケジュールを守ろうとするなら、必ず無理が起こります。こういったことが、安全という本質よりも、その場の”締め切り”のような分かりやすいプレッシャーに負けてしまって事故が起こっていきます。
・システムの統合というのはマイナスからのスタート
システムをゼロから作るのがゼロからスタートだとすれば、統合というのは負の資産を伴うマイナスからのスタートとなります。「従来の延長でいい」という選択をするとコストも抑えられる「システム統合」となりがちです。
たしかに”再利用”という言葉は素人の人にはとても分かりやすいし、エンジニアじゃない人が「なぜ再利用しないの?」という質問に対して、設計の複雑さを説明しても相手が理解できないかもしれませんね...そして、経営層は、株主という大衆に対しての説明責任を負っているので、”再利用”して”統合”しそうです。
・品質保証の部署はやればやるほどコスト増につながる
品質を求めれば求めるほどコストが上がる。一方で安全に対する品質はユーザには分からないので削られる方向に。安全性というのは「そんなの企業努力でなんとかしろ」という程度の認識しかないため。結局、何かあったら「だから駄目」というだけでオッケーなのと、安全に関する品質などを評価する手段が消費者にないというのが背景だからでしょうか。
・相似則の落とし穴
10のサイズで上手くいった場合、そのまま大きくして100にしても上手くいくと思われるが、100のサイズにすると表面積は100倍でも、体積は1000倍になる。
ということは強度の設計や熱設計については全く違うものになる。
posted by 山崎 真司 at 08:07|
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